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ネッド・ダグラス・インタビュー

L.A. 発!超ヘヴィサウンド!
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去る(2011 年)5 月、ユーリズミックスのデイヴ・スチュワートとミック・ジャガーが新バンド SuperHeavy を結成した。これは、ジョス・ストーン、ダミアン・マーリー、そして『スラムドッグ$ミリオネア』などのフィルムコンポーザーとして知られる AR ラフマーンも参加する国際色豊かな「スーパーバンド」だ。我々は、「Weapons of Mass Entertainment」レコーディングスタジオのチーフエンジニアでもあり、このスーパーバンドの新作でレコーディングおよびプロデュースを担当するプロデューサー、ネッド・ダグラス氏とインタビューする機会を得た。

 

Ned Douglas & Dave Stewart

こんにちは、ネッド!あなたはハリウッドの Weapons of Mass Entertainment でデイヴのプログラマー兼エンジニアスタッフとして働いていますよね。今回のスーパーバンドプロジェクトでは Dangerous の『D-BOX』を使っているようですが、デイヴ・スチュワートの作品でこの機材を使うようになった経緯は?

 

デイヴとはもうかなり長いこと一緒に仕事をしていて、エンジニア兼プログラマーとしてはもう 15 年来の付き合いになるね。彼は驚くほど創造性豊かだし多様性にも富んでいるから、いつもワクワクさせられているよ。昨年スタジオを移転した際に、ほとんど使用していなかったミキサーを処分したんだ。場所の無駄使いに思えてね。『D-BOX』ならアナログ段を残しておけるのが素晴らしいよ。トークバックやヘッドフォンのレベル、インプットにもすぐ手が届く。

 

「スーパーバンド」結成のアイディアは一体どのようにして現実に?

 

デイヴはこれまでもミック・ジャガーと数多くの仕事を共にしているけれど、スーパーグループ結成のアイディアは彼らが 3 年前に一緒にセッションした時に浮上したんだ。ミックとジョス・ストーンとは映画『アルフィー』のサウンドトラック制作時に一緒に仕事をしているから、あの二人が一緒に歌ったら素晴らしいものができることは分かっていた。ダミアンと AR も国際色豊かなプロジェクトをやりたがっていたから彼らも加わることになったんだ。ハリウッドの Henson's Studio で 2 週間に渡り彼ら全員がともに作業し、かなりの数のトラックを録ったよ。楽曲はすべてスタジオで作られたもので、バンドとしてのジャムセッションから生まれたものばかりなんだ。アルバムの残りは異なる国やスタジオ(ボートの上やカリブ諸島も含むよ)で作業が行われ、僕はプロジェクトの全過程に関与している。すべての作業についていくのはかなり大変なミッションだったよ!

 

世界の各地から音源が送られてくる中、バンドの「ノリ」とサウンドにはどのようにして一貫性を持たせることができたのですか?

 

最初のジャムセッション時の録音トラックはかなりの数に上ったけれど、ダミアンのドラマーとベーシストの演奏によって、どの楽曲の根幹もかなり一貫したものに仕上がっていたんだ。他の場所で行ったセッションでは、ProTools のステレオセッションでプラグインを使わなくても素晴らしいミックスになるように録音した(エンジニアのクリフ・ノーレルに感謝!)。僕自身がラップトップを持参すれば、前回録音した音源をそのままの状態に保て、さらに各トラックにフルでアクセスできるようにしてあった。Henson's Studio 以外の場所で行った作業は歌録りと歌詞だね。でも、"Beautiful People" や "Warning People" といった曲は僕のラップトップでプログラムして出来た曲で、後からバンドで音入れし直したものだよ。

 

このプロジェクトのレコーディング作業の最中に、風変わりな楽器を使ったり、奇妙な瞬間に遭遇したようなことはありましたか?

 

AR ラフマーンが面白いセットアップをしていてね。彼は『Continuum』と呼ばれる MIDI コントローラーを使っていて、微分音の演奏が出来るんだよ。彼はそれを、名前を失念してしまったんだけどインドのサウンドモジュールに繋げているんだ。あんな MIDI セットアップは初めて見たね。でも、それで彼はいろいろクールな音色を出すことが出来たんだ。

 

SuperHeavy

ミックとジョスのボーカルは WOME で録音したようですね。この驚くべきシンガー二人をレコーディングした際のオーディオチェインを教えていただけますか?


ジョスとミックのレコーディングには Avalon の真空管コンプレッサーとビンテージの (Neumann)『U67』を使ったよ。僕は EQ は使わず、コンプも最小限度に留めているんだ。

 

あなた自身のバックグラウンド、それと最近の活動内容を教えて下さい。 プログラミングを始めたのはいつですか?そしてどのようにしてエンジニアに?

 

20 年ほど前にロンドンで SAE に通っていて、それが自分の基礎になっている。それからロンドンでアシスタントとして働き始めたんだ。プログラミングはかなり早い段階で『Digital Performer』を使ってやり始めたんだ。当時 Mac で使えたソフトはこれしかなかったからね。もう何年も使ってないけど、AKAI の『S1100』サンプラーも大好きだよ。ツマミとボタンを触れるあの感覚がなんだか懐かしいね。

 

デイヴ・スチュワート以外にも、あなたはプログラマーとしてミック・ジャガーやケイティ・ペリー、ノー・ダウトといった有名なアーティストと仕事をしてきていますが、こういったアーティストからの依頼内容は具体的にどのようなもので、どんな機材を使って作業しているのですか?

 

こういったアーティストと一緒に仕事をして、伝統的なスタジオとは違った環境で楽曲が完成していく過程を目にすることができるなんて僕は恵まれているよね。僕のセットアップは小振りで軽量。アイディアが浮かんだら録音してトラックを重ねていくことができるようにしている。だから堅苦しくないリラックスした方法で作業ができるんだ。作曲の過程においてはとても貴重な環境さ。

 

録音は、持ち運びできるインターフェイスに『Digital Performer』を走らせて、いくつかのプラグインを挿して行っている。僕は Spectrasonics の製品をとても気に入っていてね。特にキーボードとシンセには『Omnisphere』が最高なんだ。サウンドの幅も広いし、立ち上がりも迅速なんだ。それでも自分の必要に応じてサウンド設定を変更できる奥深さも備えている。僕は、その場の「ノリ」が勝負となる曲作りの現場で仕事をすることが多いから、迅速かつ簡単に意図したサウンドを得ることが重要となってくる。

 

他にも Rob Papen のアナログスタイルシンセ音源、BFD の生ドラム音源、Machfive のサンプリング音源、それに Native Instruments の幅広い楽器音源やシンセ音源なんかも気に入ってるよ。あまり知られてないけれど、Sonic Charge の『µTonic』と『Synplant』も好きだね。僕はストリングス音源には East West のライブラリ、ピアノ音源には『Ivory』、そしてベース音源には『Trillian』を使っている。たくさんのプラグインをロードできる『Receptor』も使うね。ラップトップの負担を軽くできるから、旅先で作業する時は特に便利なんだ。

 

アイディアが浮かんだら、トラックを重ねて形にしていく。僕は主に『Digital Performer』を使っていて、オートチューンのような使える機能も搭載されているし、MIDI との相性も良いんだけれど、様々な面でスタンダードになってる ProTools を使うこともかなり多いよ。僕のメインルームには、マイク録り用に MOTU の 896 と 2 台の『8Pre』に加えて、Avalon と『1176』に Focusrite のプリアンプを用意している。プラグイン的には UAD の製品を使うことが多いね。EQ やコンプは本当にしっかりモデリングされていて音色も素晴らしい。

楽曲の形が出来上がったら、より大きなスタジオに移動して生のドラムを加えたり、オーバーダブを行ったりする。この作業方法だと、曲作りの時の「ノリ」と興奮を最終ミックスの段階まで維持することができるんだ。

 

あなたはリンゴ・スターのような偉大なアーティストのエンジニアとしてもクレジットされていますが、現在はプログラミングと比べてどれぐらいの時間をエンジニアリングに費やしているのですか?プログラムとエンジニアリングの両作業に明確な区切りはあるのですか?それともあなたにとってはどちらもプロダクションの過程なのですか?

 

僕の作業の大半はプログラミングではあるけれど、そこには歌やギター録り、ミックスをしたりというエンジニアリング作業も明らかに含まれている。でも、僕にとっての真のエンジニアリングというのは、SSL の前に座ってドラムやオーケストラ、フルバンドのマイキングをしたり、ってことを指している。そして、こういった作業は僕は最近はまったくと言っていいほどやらない。とは言え、偉大なエンジニアやライブミュージシャンと一緒に仕事をするのはいつも楽しいけどね。

 

最近のスティーヴィー・ニックスのプロジェクトでは、あなた自身が ProTools とプログラミングを駆使してキーボードからエンジニアリングまで基本的にすべて一人で作り上げていますが、あなたは自分自身をプロデューサーだと考えていますか?それともすべて一人で出来るツールがあるから、そういった作業をしたのですか? 時間や予算の制限なども理由の一つ?

 

そのスティーヴィー・ニックスのプロジェクトの時は、スコット・キャンベルという素晴らしいエンジニアがいてくれたんだ。だから、彼がバンドサウンドで作業している間に、僕は自分のプログラミングを思い通りのサウンドに仕上げることができたんだ。あのプロジェクトの作業の大半は、スティーヴィーの自宅で行ったんだよ。見事な環境さ。リラックスして仕事ができたよ。スタジオに莫大な予算をかけずに彼女の自宅ですべての曲作りと歌録りが出来たのは、現在手に入る各種ツールがあるおかげだね。

 

SuperHeavy

手掛ける作品ごとにあなたが心がけていることは何かありますか?芸術面、技術面、人間性、あなたが音楽制作の過程において最も重視しているのは?

 

デイヴ・スチュワートとの仕事を通じて得たのは、レコーディングルーム内の「ノリ」が非常に重要な役割を担っているということ。技術的な問題の解決で待たされることほど、ルーム内の「ノリ」を殺いでしまうものはないね。アイディアを迅速に理解してそれを慌てずに反映させることも必要だ。本質的に、人はリラックした状態で楽しんでいる時こそ最高の結果を出すんだ。もしそれが誰かのリビングルーム内で SM58 を使ってレコーディングすることであれば、(特に作曲段階であれば)そうするべきだね。

 

僕自身が学んだ最も大切な教訓は、常に録音しておけ!ってことかな。

 

思い出せる範囲で結構です。あなたにとって今までで最高のスタジオ体験とは?それと、あなたにとって技術面での最悪の事態とは?

 

幸運にも、僕はこれまで優れたソングライターの作曲過程を目撃することができ、どれも神秘的な体験だった。空のセッションで一日が始まり、まったくの無から楽曲を生み出して一日を終える。退屈になることは決してないよ。でも技術面で言えば、ジャマイカでの作業は大変だったね。電源は不安定だし、スピーカーは飛んじゃうし・・・。ジャマイカでシャキラと作業した時は、最終的にローカル DJ のサウンドシステムを借りるはめになったんだ。

 

最後に、あなたにとって必須の機材を 5 つ、教えて下さい。


まずは当然 Mac。エフェクト作りに楽しい KAOSS パッド、M-AUDIO のポータブルキーボード、MOTU インターフェイス、それと自分のサンプルライブラリだね。これでほとんど準備完了さ!

 

どうもありがとう、ネッド!

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