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リバーブを理解する : パート1

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Craig Anderton 2008/10/11

Craig Anderton 2008/10/11
リバーブを理解する


私たちが現実の世界で音を聴くときは常に音響空間が存在する。例えばあなたがリビングルームでアコースティック・ギターを弾いているとしよう。あなたはギターの音を聴いているだけでなく、ギターが発生させた音波が壁や天井、そして床ではね返り、その音波のいくらかがあなたの耳に戻る。この音波は空間を旅した分だけ、ギターから直接届く音に比べていくらか遅れる。

これらの全ての反射の結果として得られる音は非常に複雑であり、リバーブレーション(残響音)と呼ばれる。音波は物体によってはね返る度にエネルギーを失い、レベルとトーンは変化する。もし音波が枕やカーテンに当たれば、固い表面に当たった場合に比べて吸収されるだろう。高い周波数は低い周波数に比べて吸収されやすい。そのため音は長時間旅するほど鈍くなっていく。これをダンピングと呼ぶ。もうひとつの例としては、観客で埋まったコンサート・ホールが空の場合に比べて音が異なるのは、観客やその服が音を吸収するためだ。

反響音は重要だ。なぜならそれによって空間の感覚が得られるのだから。ライブ・レコーディングでは楽器の音とミックスできるように、しばしば場の音を録るための複数のマイクがセットされる。レコーディング・スタジオに於いては、たくさんの反響が得られる『ライブ』ルームと音響上の反射を可能な限り抑えた『デッド』ルーム、または片面には吸音材質、反対側に固い材質を設えた『ライブ/デッド』ルームがある。
ほとんどの場合ドラマーはライブな大きい部屋で録音することを好むので多くの自然な残響が得られる。ボーカリストの録音はボーカル・ブースのようなデッドな部屋で録音されることが多い。そしてミックスダウン時に人工的なリバーブによって音響空間がクリエイトされる。

自然なものであろうと人工的なものであろうと、リバーブは今日のレコーディングには欠くことのできないものになっている。この記事では人工的な方のリバーブでは何が可能で、どのように働くかについて述べる。後日パート2でベストなリバーブの使い方に関するヒントもカバーしたい。







様々なリバーブのタイプ





図1: TC Electronic MegaReverbでは様々な空間を合成できる。形やサイズ、周波数レスポンス等数多くのパラメータを設定可能だ。



人工的なリバーブには主に2つのタイプがある。合成タイプと畳み込みベースのものだ。合成リバーブは様々な演算により部屋の音をモデリングする (図1)。例えば『ホール』アルゴリズムでは音波がコンサートホール内を旅する距離が小さな部屋のそれに比べて遥かに長くなるような計算が為される。従って残響は時間をかけて衰退する。『ルーム』アルゴリズムはクラブや練習場のような小さな部屋を形成する。他にもギターアンプの『スプリング』リバーブや60年代に広く用いられた『プレート』リバーブを再現するアルゴリズム等がある。それぞれのアルゴリズムは異なる音質だが基本的には同じ原理で働く。つまり信号がリバーブに入り、分析され、リバーブ・アルゴリズムが指定された音響空間でどのようになるかを真似るようにエコーや反射を生成するのだ。

畳み込みリバーブは部屋の音を『サンプリング』する比較的新しいタイプの技術だ。室内でスポーツ競技でのスタート合図のピストルのような衝撃音によって反射を生じさせる。これらの反響音は録音され、分析され、その部屋の特性の非常に精密なモデルに変換される。
例えるなら畳み込みリバーブはあなたの音を注ぎ込むための『鋳型』のようなものだ。そして音はその部屋の中で鳴った場合の特性を身につける。




図2: Sonar 8に含まれるVoxengoのPerfect Spaceリバーブ。教会の特性がロードされたところ。



合成タイプと畳み込みリバーブの違いはシンセサイザーとサンプラーの違いのように考えることもできる。シンセサイザーでは音に対して様々なコントロールをすることができるが、より印象主義的なサウンド・キャラクターになる。それに対しサンプラーでは非常に正確にサウンドを再現するが、一般的に音色エディットの自由度はより少ない。

もうひとつ考慮すべき点として、畳み込みリバーブはプロセッサーに高負荷がかかる処理であることが挙げられる。最近になってようやくリアルタイムで処理できるほどコンピューターがパワフルになってきたが、それでもなお、処理の遅れが聴き取れるような状況があるかもしれない。幸いリバーブはディレイをベースにしたものということもあるが、速いコンピューターでは特に問題になることはないだろう。







リバーブの要素





図3: 残響はいくつかの音波の要素から構成されている。



洗練されたリバーブは数多くのパラメータを持つが、実践的なレコーディング現場でどのようにこれらのパラメータを最適化すれば良いかを知る人は少ない。なので様々なパラメータがあなたの音にどのように作用するかについて見て行こう。

リバーブは2つの主な要素を持つ。(図3):


初期反射(アーリー・リフレクション)は音波が壁や天井等に当たった際に起こるエコーの最初のグループを構成する。これらはより明瞭な傾向を持ち『リバーブ』よりは『エコー』に近い。初期反射のレベルをコントロールすることはよくある。

後期残響(ディケイ)はこれらの音波が引き続き空間を反射して作り出される音。これがほとんどの人がリバーブとして連想するもので、リバーブテイルとも呼ばれる。

他のパラメータでは、発生した音から最初の反射が起きるまでにどのくらいの時間がかかるかを設定するプリディレイがある。空間が大きいほど壁や天井に到達し反射しはじめるまでの時間がかかるのでプリディレイは大きくなる。







上級パラメータ 1



以下はハイエンドな合成リバーブに見られるパラメータについて。より安価なリバーブではこれらのパラメータのサブセットを持つ場合が多い。畳み込みリバーブには一般的に言ってあまりパラメータはないが、近年エンジニア達はいかに畳み込みリバーブをより柔軟に調整できるようにするか研究してきた。

アルゴリズム
既にホールやルームのアルゴリズム、そして『ビンテージ』な合成リバーブをエミュレートするアルゴリズムについて述べたが、大聖堂やスタジアムといったアルゴリズムがあるように,小さな部屋でもクローゼットでも…何でも可能だ。フルボリュームから無音へ減退する代わりに残響が大きくなりフルボリュームに達するような『リバース』アルゴリズムや、リバーブテイルをある程度のレベル以下にぶっきらぼうにカットする『ゲート』アルゴリズム(このエフェクトは80年代にポピュラーだった。特にフィル・コリンズのアルバムで)等がある。

畳み込みリバーブの場合、同様のコンセプトはインパルスと呼ばれる。インパルスは特定の部屋(有名なコンサートホールのような)や、ギター・キャビネットのような空間でキャプチャされたサウンド特性データ。昔のリバーブのインパルスを作成することも可能なので、古いLexicon PCM-70のような音のインパルスもあり得るわけだ。

異なるルームタイプのサンプルを載せておこう。これらのサンプルは異なるリバーブ・タイプやセッティングを比較しやすい方法として単発の打撃音でリバーブを発生させている。

小さな部屋 - プレート - 大聖堂 - ブライト・チェンバー

ルーム・サイズ
このエフェクトは『バーチャル・ルーム』内で音波が跳ね返る長さに影響する。現実の部屋と同様に、人工の部屋にも『定在波』と共鳴(レゾナンス)を持たせることができる。もしリバーブ音が断続的にゆらぐ場合は、この値を次項のディケイ・タイムと併せて調整することでなめらかな音を得られる。

ディケイ・タイム
このパラメータは反射エネルギーが失われるまでにかかる時間を決定する。長いリバーブはソロでは強い印象を残すが、アンサンブルのような文脈では(音がかなりまばらなアレンジでない限り)稀にしか効果的にならないことも覚えておいて欲しい。ディケイ・タイムのスペックはRT60と呼ばれ、これはオリジナルの信号の大きさから–60dBに減退するまでにかかる時間を意味する。例えば RT60=1.5 の場合、オリジナルのレベルが–60dBに減退するまでにかかる時間は1.5秒ということだ。

ダンピング
もし固い壁面のホールを音が反射しあう場合、リバーブテイルはハッキリした固い音になる。より柔らかい(コンクリートに対して木のような)壁面ではリバーブテイルは反射の度に高周波数成分を失いながらより暖かみのある音になっていく。もしあなたのリバーブで高域がなめらかにならないようだったら、ダンピングをより中音域から低音域にフォーカスしてみよう。次のサンプル・ファイルの違いを聴き比べてみて欲しい。

フル・ダンピング(鈍くてぼんやり) - ダンピングなし(はっきり)






上級パラメータ 2



高域および低域減衰(High and low frequency attenuation)
これらのパラメータはリバーブに入る周波数を制限する。もしあなたのリバーブが金属的に響いてしまう場合は、4〜8kHz以上の高域を減らしてみよう。素晴らしいサウンドのプレート・リバーブの多くは5kHz以上にはあまり反応しないものだった。だからもしあなたのリバーブに高域のきらめきがなくても心配するにはおよばない、それはあまり重要ではないから。

リバーブに入る低周波数帯域を減らすとサウンドの曇りを減らすことができる。100〜200Hzを落としてみよう。

初期反射拡散(単にディフュージョンとも呼ばれる)
初期反射を密接に押し広げる拡散を増やすことで音に厚みを持たせることができる。拡散を減らすと音はより個別のエコー的な傾向を持つようになる。ボーカルやサスティーンの効いたオルガンやシンセ等のキーボードでは、拡散を抑えることでサウンドソースに勝ち過ぎない美しいリバーブ効果が得られる。一方、ドラムのようなパーカッシヴな楽器では拡散が多い方が巧くいく。なにしろまるでビー玉が鉄板の上で弾んでいるような音でさえスムーズにすることができるのだ。
次のサンプルで比較することができる。

ディフュージョン最大 - ディフュージョンなし

リバーブテイル自体が独立したディフュージョン・コントロールを持っていたり、またはディフュージョン・パラメータが単独のコントロールにまとめられている場合もある。

初期反射プリディレイ
音が発せられて壁に当たり跳ね返り始めるまでには数ミリ秒かかるが、このパラメータは通常0から100ms付近までの範囲でこの効果をシミュレートする。このパラメータを長くすると空間が大きく感じられる。もしあなたがルーム・サイズを大きく設定している場合には、恐らくプリディレイも相応に上げたくなることだろう。

リバーブ密度(Reverb density)
低密度の場合は、最初の反射とその直後の反射との間により空間があるように感じられる。高密度では全てが近くなる。筆者は通常パーカッシヴな音源には高密度、ボーカルやサスティーンのある音には低密度を好んで用いる。

初期反射レベル
これは全ての残響に比較して初期反射のレベルを決める。初期反射があまりはっきりし過ぎたり、分離したエコーになってしまったり、あるいは後期残響に埋もれてしまわないようにバランスをとろう。初期反射レベルが低いとリスナーはホールの後方から中央を向いて居るように感じる。

高周波数帯域残響、低周波数帯域残響(High frequency decay, low frequency decay)
いくつかのリバーブでは高域と低域で独立した後期残響時間を設定できる。周波数帯域は固定か、または帯域の分かれ目を設定するクロスオーバー・パラメータを持つものもある。
これらのコントロールはリバーブのキャラクター付けに効果絶大だ。低域残響を増やすとより大きくどっしりした音になる。高域残響を上げれば霧のような効果が出てくる。数少ない例外を除いてこのようなことは自然界では起こらないが、ボーカルに関しては歯擦音や摩擦音によりリバーブをかけることで、破裂音やより低い音域のリバーブを最小限に抑えたい場合とても良い結果を生む。ボーカルには適さないぼんやりした残響を避けることができるのだ。

次のステップ:リバーブをどうかけるか
リバーブがどのように働くか解ったので、いよいよ音楽にどのようにかけるかを考えよう。しかし長くなるのでまた別の機会に!


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