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ワールドクラスのミキシングエンジニアが答える

デイヴ・ペンサド・インタビュー
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デイヴ・ペンサド。改めて紹介する必要のない人物だろう。彼は、数えきれないほどのヒットレコードに携わったワールドクラスのミキシングエンジニアだ。Jaycen Joshua、Ethan Willoughby、Ariel Chobaz といった一連の敏腕ミキシングエンジニア達の師匠にあたる人物でもある。

そんなデイヴが忙しいスケジュールの合間を縫っていくつかの質問に答えてくれた。それでは、楽しんで。

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私は昨日夜中の 3 時に寝床につきました。あなたは何時に寝床へ?あなたにとって普段の一週間はどんな感じですか?


僕はまだ起きてるんだ。昨日は寝ていない。僕は週に 105 時間ほど働いている。毎日 14 時間以上が仕事さ。波に乗ってる時は途中で作業を止めたくないんだ。2 週間ぶっ続けで仕事をしてその後一日二日ペースを落とすことも珍しくない。

 

それでは簡単なバイオを聞かせて下さい。あなたは音楽的な家庭環境で育ったのですか?楽器は小さな頃から?自分自身をミキサーだと思っていますか?


僕は幼少の頃から音楽に囲まれていたんだ。僕の母親が才能ある音楽家で、彼女からたくさんのことを学んだよ。ミキシングをするために生まれてきたのかどうかは分からない。でも、自分のことをミキサーだと思ったことはないんだ。僕は自分自身をレコードを作る人間だと考えている。アルバム制作の全過程に関わることはない。僕は普段は制作の後半から参加するんだ。でも、エンジニアリング作業をカテゴリ分けしたりはしないよ。どの作業だってレコードを作るために必要な過程だからね。僕自身はどの作業段階でも楽しめる。ただ、ミキシングに関わることが多い、ってだけなんだ。一時期、僕はレコードで演奏する側になるだろうと考えていたんだ。演奏する立場からエンジニアになるのはそれほど大きな変化じゃない。そうやってエンジニアになった人はたくさんいる。僕たちは貧乏なミュージシャンだったから、エンジニアを雇えなかったんだよ。

 

なるほど。それでは、あなたのトーク番組『Pensado's Place』について訊かせて下さい。著名人達を身近に感じさせてくれる番組になっていますね。その上貴重な情報を丸々曝け出してしまっています。自分の技術をあそこまで躊躇なく披露できてしまうのはなぜですか?


この点は繰り返しておこう。僕は自分のエンジニアリング技術を売っているのではなく、自分のテイスト(嗜好/感覚)を売ってるんだ。

Jaycen は僕から技術を習得したけれど、見事なテイストの持ち主だ。それは Dylan についても同じさ。僕が彼らを選んだのは彼らのテイストが好きだからさ。彼らは時間の経過と共にスキルを吸収していった。面白いのは、僕のアシスタントは誰一人として僕のようなサウンドを作らないってことなんだ。彼らは彼ら自身の音があり、実際そうあるべきなんだ。仮に僕たちが画家だったとして、大学で絵の勉強をするとしよう。その際の問題の一つは、画家達が自分の教師の物真似に陥ってしまうことなんだ。教師の中には、自分たちの感覚の良し悪しで成績を決める人もいる。でも、すべては美学なんだ。

読者のみんなに知ってもらう良い機会かも知れないので言っておくと、自由な時間が 2 時間あったら、一番有意義なのは技術を学ぶことより、できる限り多くのレコードを聴くことなんだ。 自分自身のリファレンス音源集を作ること。こんな神話がある。アコースティックギターを買ったら、まずそれをスピーカーの前に置いて、自分が知る限りで最高の音楽をスピーカーからかけてギターにその音を染み込ませること。そうすればギターの木がそのサウンドを覚えていてくれる、っていうんだ。ミキシングエンジニアにもそれと似たようなことが必要なんだ。自分自身のテイストを見つけて、そこから掘り下げていく。

 

本当にそうですね。ところで、あなたの番組はこれからどうなっていくと思いますか?素晴らしいショーですし、人気も出てきているようです。目標はありますか?


僕は、『Pensado's Place』のすべてのエピソードを万人向けにはしたくないんだ。それぞれのエピソードごとにある特定の内容を伝えたいと思っている。どのエピソードも時代に関係なく面白い内容にしたい。一年後にはもう時代遅れ、っていうのは嫌なんだ。この番組はミキシングに関しての話ばかりではなく、この職業をとりまくすべての内容をテーマとしている。このショーのコンセプトの一つは、「ミックスを作ったら、あなたはそれで一体何がしたいんですか?」という質問さ。

 

ゲストとして A&R など、ビジネスに直接携わる人を招いている。UCLA の芸術教授ですらも招いたことがあるよ。の構成要素は同じだからね。つまり、創造性が創造性であることに変わりはない。それなら、僕は異なる視点を知りたいんだ。僕のショーは、成功を収めたミキシングエンジニアの趣味についての番組かもしれない。その趣味からどのように優れたエンジニアになったのか、ってね。みんなにとって親しみやすいエンターテイメントになっていることを祈るよ。でも、どのエピソードも万人向けとは限らないんだ。

 

私は料理をします。まぁ、あまり知られていない事実なんですが。あなたの趣味はなんですか?


写真だね。ミキシングの時にも視覚的隠喩をたくさん使っているよ。

 

『Pensado's Place』のこれからは?具体的な予定はありますか?


この番組に将来はあるとみている。誰か他の人に席を譲るかも知れないが、観てくれる人がいる限り番組は続いていくだろう。仲間達と楽しく話をする内容だからね。僕は重要性のあるショーを常にイメージしてきた。変化はするかもしれない。我々の業界が変化するように。そしてミキシングの職業が変化するように。

 

2011 年度のミキシングは、90 年代のそれと比べて 60% も異なるものになっている。番組に人を呼んで未来の展望を語り合う。どうやって生計を立てていくか、どうやって学んでいくか。広範囲だし、不可能に近いタスクだ。でもやってて楽しいんだ。知らないと思うけど、僕は番組を絶対に編集させない。ライブなんだ。自分のゲストと自分、という生身の人間同士が作る空間さ。編集をするとしたら、ゲスト本人が自分の発言を収録後に不適切だと感じた場合のみだね。

 

『Pensado's Place』は本当にデイヴ・ペンサド以上の存在ですね。素晴らしいチームですよ。Herb は非常に素晴らしいです。


もう 20 年も Herb のことを知っているけど、彼がそこにいるだけで楽しくなるんだ。ゲストが Herb や僕とやり取りしているのを観れば分かると思うけど、最初は若干緊張しているゲストもすぐに打ち解ける。無から始めてここまで成し遂げられたことを誇りに思っているよ。番組の制作に今では 20 人が携わっている。YouTube での閲覧数や、今まで放映されたエピソードの視聴数を考えると、かなり多くの人に観てもらっていることになる。Will や Herb、Ryan、Ben、そして Ian がいなかったらこの番組は作れなかった。僕の名前のついた番組だけど、縁の下の力持ちは彼らさ。僕の妻は、番組に寄せられる質問を選りすぐってくれるんだ。

 

メールやコメントもたくさん来るでしょうね。


300 通ぐらいあるね。でも、一人一人に返信する時間がないんだ。だからこれを読んでる人に伝えておきたい。僕は返信はしないが、メールにはすべて目を通しているよ。

 

あなたは以前、ロックより R&B のミキシングの方が大変だとおっしゃってましたよね?ロックサウンドは、ヒップホップに影響されたポップの要素を取り入れてるように思いますが、ロックのミキシングは変化したと思いますか?また、それはどうしてですか? 今でもロックの方が簡単だと思いますか?


僕は今でも自分のその発言を支持するよ。でも、最初にそう述べた時は、僕の別の発言部分が取り上げられると思ってたんだけどな。説明すると、ロックの世界では、トラッキングにすべての労力がつぎ込まれる。R&B の世界では、それがミキシングなんだ。R&B でのトラッキングは単に「テープに収める」ことを意味する。しかし、数多くのポップ作品では、ミキシング作業もプロダクションに不可欠な要素となる。つまり、プロデューサーがサウンドを作り、作業が進むに連れて彼自身がミキシングをも行う。僕が R&B やポップのレコードを作る時は、各トラックのセッションにプラグインが挿してあるんだ。プロデューサーが自分なりにミックスした証拠だ。それから僕がすべてをバラバラにして整え直すんだよ。

 

ロック作品の場合、僕がトラックにプラグインを挿すことは稀なんだ。なぜならすべての情報はライブ演奏の中に集約されているから。驚くべきスキルと才能が、トラッキングの中にすべて収められている。個人的には、最も難解な技術はトラッキングの際に必要とされると考えている。優れたトラッキングエンジニアは、最高のミキシングエンジニアに引けを取らない。とは言え、どちらが難しいかは一概に言えない。作業内容に応じて異なる技術が必要とされるからね。優れたミキサーが心がけるべきこととして私が常に念頭においているのは、まず十分な体力と感情をもっていること、そして何より楽曲をユニークに響かせることができることなんだ。Manny がそんな感じなんだよ。最終的にミックスはサウンドを操作することではなく、感情、なんだ。

 

この仕事を初めてすぐの頃、まだエンジニアになって 3 週間しか経ってない時、世界でトップクラスのバグパイプ奏者によるバグパイプ作品を作ったんだ。誰かがたくさんの猫を踏んづけまわしてるようなサウンドだったな。滑らかなサウンドにしようと EQ をかけると、すべてのサウンドが台無しになってしまうんだ。あれは難しかったね。だから、あの音を(そういうものだと)受け入れて、演奏の方に神経を傾けた。アルバムは好評だった。自分の感情を理解したしたことが成功の鍵となったんだ。

 

我々の仕事は、痛みを少し和らげることでもある。人々が覚えているのは、曲を聴いた時に感じたエモーション、そしてフィーリングなんだ。レコードが売れる秘密はそこにある。そして、今レコードが売れない理由も恐らくそこにある。

 

あなたは、いつどの段階で「ミックス終了」と感じるのですか?


僕は 35 年前にミキシングを始めたんだけど、まだやり終えてないミックスがあるんだ。ミックスは終わらない。ただ時間切れが来るだけさ。クラシックやジャズなら、ミックスを完成させることができるかも知れない。インターネットのある現在では、ミックス作業を終えたその瞬間に、もうそれは時代遅れになっている。僕は、時代の先端に立って、トレンドの進化に貢献するのを楽しんでいるんだ。でもそのトレンドも常に変化し続ける。そしてどの曲も数えきれないほど異なる聴き方ができる。実は先日、数ヶ月前に作ったミックスを作り直したばかりなんだ。

 

どんなトレンドに注目しているんですか?


2 年前は、ヒップホップに代わってユーロダンスが流行ってくると予測していたんだ。

別のトレンドはロック。火に油を注ぐ形だ。今はもう、すぐに耳に馴染んでくるようなロックはもうないと思う。今ではロックは音量の下がったギターに甘いエフェクトのかかったポップ音楽さ。最後に出た優れたロックレコードは Queens of The Stone Age だね。ロックは今やシンセの代わりにギターの乗ったポップと化している。ドラムなんか実際に叩いてないしね。

 

ロックにもサンプルやプログラミングが増えていると思いますか?


違いはあるのかい?ドラムのサウンドを差し替えて、タイミングを完璧にしても、君が作ったのは飽くまでもプログラミングだ。生のドラムとなるとドラマーがいる訳だし、あちこちいじる訳にもいかない。しかし、完璧なタイミングのドラムトラックは、ロックではタブーなんだ。

 

R&B なら安定したドラムトラックが必要さ。リズムを組み立てるのに我々はドラムを頼りにはしない。我々は完璧なリズムに反するように演奏するのさ。 ロックでは、ドラムトラックこそが動かないといけない。例えばローリングストーンズのドラム。あそこは全員がキースについて行く。それが上手く機能してるんだ。チャーリーのドラムをクオンタイズしてしまったら、キースの演奏はタイミングがずれてしまう。論点はライブかプログラミングか、ではなく、パーフェクトかエモーショナルか、なんだ。

 

私はかつて、ミックスの三分の一はアンビエンスが占めると感じたことがありました。でも、そうではないと感じる自分もいます。私にとっては、ルーム、リバーブ、ディレイこそがミックスを作る、もしくは逆にそれを壊してしまうものなんです。あなたの尺度は?アンビエンスの形成にはどれぐらい時間を費やしますか?

 


アンビエンスにかける時間は特に決まっていないよ。パンポットが 2 つあって、1 つは左と右、1 つは前と後ろ。前と後ろのパンポットは想像上のものさ。体育館の中で、自分と反対側にいる誰かが大声で叫ぶとしよう。その声が自分の耳に到達したら、彼が自分とどのくらい離れた場所にいるのかを脳が計算する。50~100ms ぐらいだろうか。その空間の大きさを判断するアーリーリフレクションだよ。リバーブ、エコー、プリディレイ、アーリーリフレクションなどを緻密に設定すれば、かなり正確に音の配置ができる。

 

レコーディングの世界では、サウンドはある意味ではすでに想像上のものに過ぎません。アンビエンスの形成に「正確さ」はどれほど重要なんですか?


正確さはミックスにとって重要なんだ。もし何もかもが同一のオーディオ空間軸に存在したら、それぞれの音の識別は困難だ。2 つのサウンドを同時に聞き分けることができなくなる。だからミックスによって聴き手の耳を自分の好きな場所に誘導してあげるんだ。グルーブが欲しい時もあれば、シンガーが必要な時もある。優れた絵画のように、アーティストは聴き手の耳をキャンバス上に配置するんだよ。全体を一度に見ることはできないんだ。アンビエンスを形成することによって、シンガーを前面に持ってきたり、ベースをキックより後ろに持っていくことができる。僕がクリスティーナ・アギレラの『Beautiful』でやったように、シンガーの存在を際立たせるにはボーカルを前面に持ってくる必要があるんだ。プロダクション、パフォーマンス、そして僕のミキシングによって、聴き手の耳を我々の意図したところに導くことができるんだよ。今回の場合はそれがボーカルだったんだ。そのボーカルもたいていは一番最初のテイクなんだよ。

 

Rick Ross の『Deeper Than Rap』 で聞けるキックドラムは、一体どのようにしてマスタリングの段階でこれほどまで存在感を出すことができたのですか?ブリックウォールの準備はどのように?


哲学的な答えになるけど、僕は音量面からは考えないんだ。例えば音のパワーはローエンドから来る。ローエンドを操るアンプは巨大だ。ツイータは 60 ワット。つまり、そういったエネルギーは聴き手に「パワー」がある音という印象を与える。

 

それがロックの場合、重要なのはギターになる。ロックのエンジニアは、パワー感を出すためにギターにローエンドを加えるんだ。アンディ・ウォレスはそれをドラムでやり、クリス・ロード・アルジはギターでやっているね。クリスは、ボーカルを一番前に出しつつ、ギターと喧嘩しない音を作る天才だ。彼はボーカルによってエネルギーを伝えるスポットを作るんだ。僕が常に研究していることでもある。クリスとは一緒にアルバムを作ったことがあるけど、たくさんのことを学んだよ。僕が R&B を手がけるときは、8 小節目、もしくは 16 小節目にフィルとしてリズミックディレイと共にボーカルを入れるんだ。「ここからコーラスだよ」っていう合図だね。

僕はキックドラムのことは考えていない。パワーとクレディビリティ(信憑性)を考えているんだ。ポップのミキシングでは、ひと際ハイエンドが目立っているかもしれない。その理由は、その方が高級に聴こえるからさ。でも一番大切なのはコンセプトだ。

 

またアンビエンスの話に戻るけど、Allen Mireson はボーカルにノンリニアディレイをかけていたね。リバーブはタイミングを作るのに重要な役割を担っている。無音の空白は、音楽と同じぐらい大切なものなんだ。こういった無音の空白をリバーブで埋めてしまうと、単調に聴こえてくる。

 

僕はリバーブのあとにゲートをかけて、そのリバーブをサイドチェインとしてボーカルに使用する。だからボーカルが歌うのを止めるとリバーブも消えるんだ。 もう一つ、ヴァースの部分で、あまり良い内容のものができない場合は、リバーブからローエンドを取り除いてやるのではなく、リバーブの前にハーモナイザーを挿して、オクターブを加えてやるんだ。

 

Chris Athens に教えてもらったんですが、リードトラックのクローンをピッチシフトさせて、それをまたラインに戻してやるとハーモニーを強調し直せるんです。


もちろん。感覚に基づいて仕事をしている限り、神聖なものなんてないんだ。

 

ダブルマイクによる録音はしますか?ボーカルは?


たった一度のテイクで歌を録らなきゃいけない場合には一本以上マイクを使うだろうね。後から手が加えられるように 2 本は用意するね。

 

ギターを別のアンプにスプリットさせることは?


ギターの場合は、異なる音情報を持つアンプに信号をスプリットするかもしれない。トレブルの出音が良く、リードギターの高音部が抜けてくるアンプもあれば、リズムギター用の低音が良く響くアンプもある。創造性は、その異なる音情報をどのように使うか、という部分にあるんだ。

 

こういった技術は時に過剰だと感じることはありますか?


プロデューサーが決断しかねるトラックが来ることがある。250 トラック。これをミックスすることはできる。永遠に時間がかかるだろうけどね。僕は達成責任(コミットメント)を信じる人間だ。後から手直ししたくなるような音にならないよう妥協するよりは、その瞬間の音を取り込む方が大切なんだ。他の仕事の機会を逸することもあるだろうけど、一つの仕事に専念する方がより多くの結果を生む。僕は 5 つのミックスを作るよりは、自分が聴きたいと思うミックスを一つ作りたいと思うね。

 

トラッキングとは、その「瞬間」を捉える環境であって、その「瞬間」に音声情報が含まれている。そこには、スナップ写真のようにすべてが収められる。撮影の瞬間に目をつぶってしまったスナップ写真もあれば、草影に隠れて用を足している写真もあるだろう。でもフォトアルバムを見た時、その「瞬間」を思い起こすことができる。

 

ほとんどの場合、僕はミキシングに一日しか時間がとれない。一日をリペアで過ごすこともできるし、ミキシングして過ごすこともできる。一日のうち 3 時間をリペアに費やし、15 時間をミキシングに費やせれば、それは 3 時間のミキシングと 15 時間のリペアよりは遥かに充実している。トラッキングは、完璧かそうじゃないか、という話ではなく、ミキシングエンジニアに最高のマテリアルを提供することなんだ。

 

あなたは時間をかけて自分の技術を皆と分かち合ってきました。僕もいくつか自分の技術を共有したいと思います。私はリズムを刻むのみのシーケンス化されたハイハットがあると、音に動きを加えるためにフンランジャーとパンを少し加えるんです。


いいね。微妙なパンの振り分けにはペンシルツールが使える。昔は Marshall Time Modulator のディレイで似たようなことをしたものだよ。グルーヴ感を出してくれるのなら何だって素晴らしい。動きのないものに動きを加えることさ。

 

クラブ音楽を手がける時、私はミックスからキックを抜いたものをバスに送り、キック以外のミックスにバスコンプレッションをかけています。


他にも解決策として、これはダンス音楽用のテクニックだけれども、キックと喧嘩する要素をサイドチェインして、キックが鳴るとそれらにより強くコンプレッションがかかるようにするんだ。キーボードはすべて AUX に入れて、キックからサイドチェインする。

不思議な話があるんだ。良くできた 808 サウンドから「管楽器」のような音が聞こえる時がある。ブロードバンドノイズを 808 フィルタに通したことによる結果だと思うんだ。フィルタが作り出したのがこの鈴の音なんだ。808 サウンドのコピーを 2 つ作り、うち一つに SPL の『De-Verb』をかけ、もう一方の位相を反転させるんだ。そうすると鈴の音が消える。それから EQ やコンプレッサー、ディレイなどを使ってトーンを作り、それをまた原音に戻してやるんだ。

 

808 とか単純な波形サウンドの場合、僕が最初にアシスタントに教えることは、波形が単純なら EQ には手を出さずに、音量のみでミックスしろ、ってことなんだ。好きなところに配置して、気に入らないパートを取り除けば良いんだよ。僕は裏技として位相をいじったりもする。でも、これは上級技術だし、後々トラブルの元にもなりかねないから、あまり教えたくはないんだけれども。まず最初に同一信号を取り出して複製し、一つを完全に左に、もう一つを完全に右に振り分けて AUX に送り込む。それからどちらか一方の信号の位相を反転し、そこにパンを振るんだ。たいていドラムループがある場合は、うるさすぎるサウンドを一旦隔離してその信号の位相を反転させ、それからまた元の位置に戻してやるんだ。ブレンドされてたり、レイヤーのあるサンプルで作業する時は、いつも位相をチェックするようにしているよ。

 

あなたの「良い音より、斬新な音の方が良い」という発言は有名ですね。

 

「良い音より、斬新な音の方が良い。しかし、腕のいいヤツはその両方をやり遂げる。」が実際の発言だよ。こんなこと言っても無駄だけれど、君なら 3 枚しか売れない世界最高のミックスと、500 万枚売れる世界最悪のミックスならどちらを取る?オーディオエンジニアは、オーディエンスのほんの一握りだ。でも、できるのであれば、どうしてその両方をやろうと思わないんだい?

 

コンプレッションに関してだけど、200 トラックあったとしたら、最初に僕が手を出すのはコンプレッサーではないよ。まずはミュートボタンだね。ステレオベースをステレオのままにしておくことも滅多にない。かつて一度、12 トラックのシェイカーパートのミックスをしたことがあるんだ。僕はそのうち 10 トラック分をミュートした。そしたらプロデューサーがやってきてこう言ったんだ。「一体どうやってあんなに多くのシェイカートラックをまとめることができたんだい?すべてがクリアに聞こえるよ。」ってね。12 トラックのうち 10 トラックがミュートされていることに彼は気がつかなかったんだ。

 

例えば私がアーティストで、どんなミキシングエンジニアでも雇える財源があるとします。デイヴ・ペンサドを雇うべき理由は?


成功を収めたミキサーなら、誰だってこう答えるよ:作業過程の大半は、自分のテイスト(感覚)が常に正しい、と考える自惚れ(自信)にある、ってね。自信がないなら、この仕事に就かない方が良い。自分のやっていることが正しいと感じるようになると、「なぜなら自分がベストだからだ」っていう答えが導かれる。どうして僕の腕が良いのかは、他のエンジニアに訊く方が良い。自惚れに聞こえないような答えは出してあげられないな。エンジニアの手には、アーティストのキャリアと生活がかかっているんだ。これを約束してあげられるだけの自信がないなら、アーティストだって君とは仕事をしないだろう。究極的に言うと、君の仕事はアーティストを大金持ちにしてやることなのさ。

 


Matthew Weiss はフィラデルフィアにある Studio E のヘッドエンジニア。ロニー・スペクターやユリ・ケイン、Royce Da 5'9"、フィラデルフィア・スリック等を手がけた経験の持ち主。

レコーディング、ミキシング、プロダクションに関するその他の記事は『The Pro Audio Files』で。協力:Dan Comerchero

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