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よくある質問トップ 10

オーディオ・マスタリング
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The Mastering House のトム・ヴォルピチェリ氏が、マスタリングに関するよくある質問トップ 10 に回答してくれた。

マスタリングとは、そしてマスタリング・エンジニアの役割とは?

 


This feature article is provided by ProSoundWeb

マスタリングとはオーディオ・プロダクションの一過程で、ミックス音源を最終的に複製し、配給するための正しい形式にする下準備段階をいいます。この作業は、アーティストの音楽的ヴィジョンを実現させるための、プロデューサー、ミュージシャン、そしてエンジニア達による努力の結晶です。プリ・プロダクションからマスタリングに至るまで、オーディオ・プロダクションにおける各段階は相互に作用し合っており、切り離して考えることはできません。マスタリングは、あなたの音楽がスタジオ環境を抜けて外の世界へと羽ばたいて行く前に音源に手を加えることのできる最後のチャンスでもあります。

 

ミキシング・エンジニアとマスタリング・エンジニアの役割の違いは留意しておく必要があるでしょう。作業に使用するツールは似通っていても、ミキシングとマスタリングの視点は非常に異なっています。ミキシングの際に焦点となるのは、個別に録音された各トラックやエフェクトが、一つの楽曲の中でどのようなバランスになっているのか、という点です。

 

ミキシング・エンジニアの仕事が完了しない限り、アルバムを一つのまとまった音楽作品として聴くことはできません。ミキシング・エンジニアが仕事を終えたまさにその段階をを引き継ぐのがマスタリング・エンジニアの仕事となります。マスタリングは、アルバム全体にバランスの取れた統一感を加えるための作業と言えるでしょう。マスタリング・エンジニアが最も気にかける点、それはアルバム全体を通してのサウンドと解釈です。マスタリング・エンジニアは、楽曲間のギャップ(空白)の設定やアルバムの収録曲順などをクライアントと共に決定していきます。アルバムの流れはリスナーを惹き付けなくてはなりません。アーティストの創造した音楽の旅にリスナーをグイグイと引き込んでいかなければならないのです。最終的な編集作業もマスタリングの段階で行われます。

 

マスタリング・エンジニアの役割は、CD プレス工場に送られるフィジカルメディアの下準備と品質チェックにあります。これにはプリマスタリング段階の CD を聴いて、アルバム全体の統一感はもちろん、エンコードテキストや UPC/EAN 入力、 ISRC 入力といった技術的な面にも気を配り、メディア自体にエラーはないか、PQ シートが設定されているかなどをチェックします。

 

マスタリングは常に必要なのか?

 

ライターが書いた文章も、編集者がそれを承認するまでは完成ではありません。画家が描いた絵画も、つや消しされ、額縁に収められて完成となります。ミュージシャンの作品もこれと同じように取り扱われるわけです。オーディオ・プロダクションは、作品をすぐにリリースしたいからと言って取り急いで行ったり、でたらめに行ったりするものではありません。完成した作品には、アーティスト、プロデューサー、エンジニアの仕事がすべて反映されていなくてはならないのです。「完璧な」ミックス音源でさえも、マスタリングを必要とします。この場合は、できる限り透明性のあるマスタリング作業で元のサウンドを保持しつつ、最終的なメディア制作の下準備を行うと良いでしょう。

 

先程も述べたように、ミキシング・エンジニアにとっては、個別トラックのミキシング段階ではアルバムが全体としてどういったサウンドになるのかを知るのは非常に難しいことなのです。例えば、ある楽曲がすでにそのままの状態で完璧だと感じられる場合であっても、アルバムの中に収めると、音量レベルや周波数のバランスといった微調整を必要とする場合が少なくありません。オンラインで配信されている音楽の量を鑑みると、一枚のアルバムが競争の激しいこの市場で認知してもらうためには、最初から最後まで際立った内容の作品である必要があるのです。ラジオで流してもらえ、オンラインで配信され、物理的な製品として販売してもらえるための作品を作るのが最終的な目標であるのならば、マスタリングは不可欠です。

 

 

マスタリングでは、音楽スタイルに応じてバランス、音量、奥行きの補正が行われます。マスタリングを行うことにで透明感とパンチが増し、音楽をより活き活きとさせることができます。マスタリングとは要するに、マスタリング・エンジニアが手を加えることで製品をより良いサウンドに仕上げることなのです。マスタリング・エンジニアがどの程度サウンドを補正するかは、前段階で行われたミックスの出来具合によって変わってきます。場合によっては、制限や妥協も必要となってくることでしょう。

 

マスタリング時の制限の一つとして、ひどく歪んだ音源は回復不可能である、という点が挙げられます。ミックス内に存在する歪みは「腐食」と同じです。一度そこに存在してしまうと、マテリアルの一部分を永久的に駄目にしてしまうことになるのです。歪みの種類によってはマスタリング時にうまくマスキングできる場合もありますが、それはミスの修正と基本的に変わらない行為ですから、マスタリング以前の段階で修正しておくべきことなのです。よく誤解されているのは、ミックスは出来る限り「ホット」にすべきだ、ということです。24-bit のデジタル技術が発達した現在、なぜミックスをそこまで熱くする必要があるのでしょうか。

 

多くのマスタリング・エンジニアが勧めているのは、ピークレベルの -6 ~ -10 dBFS 付近をピーク最大値とすることでクリッピングの発生を防ぎ、信号処理を進めて行く方法です。ピークレベルに加えて、クレストファクタ(ピーク値/実効値)も非常に重要となります。ダイナミックを下げることは簡単にできますが、過度の圧縮やリミティングは簡単には元に戻せません。

ステレオミックスのバランスが崩れていたとしたら、マスター音源のサウンドにも妥協せざるを得なくなるでしょう。例えば、シンバルやヴォーカルから強烈な歯擦音が発せられていながら、その他のパートが暗い感じで鳴っていたとしたら、各パートがしっかり強調されるようにサウンドのバランスを調整することは難しいでしょう。

 

周波数に加えて、各トラック間のレベルの問題も大切です。マスタリング・エンジニアの手元にステレオミックスが届けられると、ミックスの各パートを完全に独立して信号処理を行うことはできません。特定の不均衡部分に対してはディエッシングや M/S 処理、イコライジングやコンプレッションといった技術が適用できますが、結果としては、ミックスダウンの時点で不均衡が生じなかった音源より質は劣るでしょう。

 

バランスの問題を解決する一つの方法は、代替(オルタネート)ミックスを作成することです。ミックスの例としては、ヴォーカル・アップとヴォーカル・ダウン、または 2 つの異なるイコライジングを施したバージョンなどが挙げられます。他にもステレオトラックの各パートを分割した「ステム」の状態、もしくはサブミックスの状態でマスタリング・エンジニアに手渡す方法もあります。ステムはヴォーカルや楽器パートの個別のステレオミックスですが、ステレオバスがなされていないというだけで、一つにまとめればステレオミックスと同じ内容となるものです。この場合、マスタリング・エンジニアの役割はややミキシング・エンジニア寄りとなり、ステレオミックスのみでは不可能な調整を行います。ステムミックスの利点は、ラジオエディットや楽器とヴォーカルのみの音源といった代替マスターを容易に作成できることです。

 

「マスタリング時に修正」するよりも「ミックス時に修正」しておいた方が良いもう一つの問題は、ノイズです。各トラックにおけるミュート・オートメーション機能は、ミックス自体には影響を及ぼさないトラック上でノイズが発生している部分に使用するのが賢明です。それは例えば、曲のイントロやアウトロ時に聞こえるギターからのハムノイズ、ヴォーカルのモニターヘッドフォンから漏れてくるプレイバック、また楽曲が完全に終了していないのにドラマーがスティックを置く音などがあります。.

 

最高のマスタリングを達成するためのアドバイスは?

 

オーディオ・クオリティは実に主観的なものです。マスタリング・エンジニアを雇う前に、あなた自身が最終的に作品をどういうサウンドにしたいのか明確な目標を持っていないといけません。こういった目標についてクライアントとエンジニアの間で意思疎通をすることが、プロジェクトを成功させる鍵となります。音のキャラクターを表現する言葉は、時に非常に曖昧です。「キラキラ」や「太め」、「存在感」といった表現は、人によって異なった解釈がなされます。腕の立つマスタリング・エンジニアは、こうした曖昧な表現を技術的過程に的確に置換し、決して押し付けがましくない方法でクライアントが求めるサウンドを達成することができるのです。

 

クライアントからの参考音源が役立つ、というマスタリング・エンジニアも中にはいます。参考音源は、クライアントが求める音像をそのまま提供してくれるため、言葉で説明されるよりも遥かに役立つのです。個人的には、完成品に求められるサウンドにできる限り近い状態でミックスされた音源を受け取りたいと考えています。しかし、まとまりのあるアルバム作品を作るために必要な作業を施す余裕がまだ残されていなければなりません。それに向けていくつかのアドバイスがあります:

 

  • ルームとモニター環境を知ってください。ミキシング作業時に小規模なニアフィールドモニターを使用している場合は、ローエンドに問題がないかを確認するために別途ウーハなどを備えたシステムでミックス音源を聴いてください。
  • モニターやルーム環境によってサウンドが「色づけ」されているようであれば、他のシステムでもミックスが正しく再生されるようサウンドの補正を行ってください。
  • マスタリング前にトラック自体に関する問題を修正してください。極度の歯擦音やアンバランスな周波数帯域、位相の問題、編集ミス、サウンドフィールドの奥行きや幅、楽器とヴォーカルの相対レベルといった点を耳でチェックしてください。
  • ある音がドロップしていたり、変に強調されすぎていた場合にすぐ聴き取れるよう、ミックス音源はモノラルで聴いたり、またはルーム内を移動して異なる立ち位置で聴くことをお勧めします。ちょっと違った聴き方をするだけで、問題点がより明らかになる場合があるのです。
  • ミックス音源には十分なダイナミクスの余裕を残しておきましょう。そうすればエンジニアが後から全体のレベルのみでなく、トランジェントのパンチとクラリティも調整することができます。
  • マスタリング作業時に効力を発揮するプロセッサ類はマスターバスでは使用しないでください。これにはエキサイターやハーモニック・エンハンサー、EQ、リミッターなど、全体の音量を上げるプロセッサが含まれます。
  • ミックス音源の最初と最後にはある程度の空間を残しておきましょう。そうすれば曲の頭にルームアンビエンスを加え、曲のフェードアウトを見直すことができます。
  • 楽曲の最初と最後に空白があると、ブロードバンドノイズ除去用のノイズプロファイルを作成する際にも非常に役立ちます。
  • 個別トラックに含まれる外来ノイズの除去にはミュート/ボリューム・オートメーションを使用します。

マスタリング・エンジニアには何を送るべきか?

 

ミックスは、できる限り元のサウンドを変化させないフォーマットで送付すべきです。デジタルミキシングの場合は、 MP3 や AAC といったフォーマットよりは、AIFF や WAV といった非圧縮型のフォーマットを使うべきでしょう。マスタリングをお願いするエンジニアがどのフォーマットを受け付けているか、事前に確認するのが良策です。ミックスの際に外部コンバータを使用したのでなければ、オリジナルトラック録音時と同じサンプリングレートにしておくことをお勧めします。ビット深度もミックス作業時に使用した値と同じであるべきですし、オリジナルトラックにディザリングや切り捨てなどを施したものを媒体に記録すべきではありません。位相の均衡を保つためにも、私はデジタルミックスにはスプリット・ステレオ形式より、インターリーブ・ステレオ形式を好みます。

 

アナログテープを使用してマスタリング作業を行っていた当時は標準だった基準音ですが、デジタル主流となった今では過去の遺物。しかし、もしアナログボードもしくは外部機器を使ってミックス作業を行うのであれば、(ミキサー 0 VU に対して)1k の基準音は左右両チャンネルのカリブレーションのチェック時に大いに役立つでしょう。自分たちがマスタリング作業に立ち会えない場合は、サンプリングレート、ビット深度、フォーマット、楽曲名、ファイル名といった情報をすべて記載したリストをエンジニアに渡すことを忘れないでください。

 

同じ楽曲にバージョン違いのミックスがある場合も忘れずに伝えてください。また、曲順はもちろん楽曲間のギャップやフェードの長さなどを指定したリストも必要となるでしょう。完成品に CD-TEXT や UPC/EAN または ISRC コードを加えたい場合も同様に記入しておきましょう。

 

この他にも、ミックス作業時にどういった機材や技術を使用したのか書き記しておくのも良いと思います。ミックス音源にまだウィークポイントがあったり、マスタリング・エンジニアに知っておいて欲しいことがあればリストアップしておきましょう。

 

マスタリング費用はいかほど?

 

価格は、スタジオ費用や間接経費に加えて、担当するエンジニアの経歴や経験によって変わってきます。次のような基本料金体系があります:

 

- アルバム一枚いくらか。収録曲数、また場合によってはアルバムの総分数で決定します。

- 一曲いくらか。楽曲ごと、もしくは楽曲の分数で決定します。

- 一時間いくらか。これには確認作業時に必要なメディア (CD) 費用や音源のリスニング時間も含まれます。

 

スタジオによっては、立ち会いのマスタリング作業の値段を、立ち会いなしの作業(最終音源を送付し、メールなどで承認をもらう方法)より高めに設定している場合もあります。

 

マスタリング費用は、1 曲 10 ドルから 1 時間 500 ドルまで、担当するエンジニアにより様々です。マスタリングは商品ではなくサビースであるため、価格の面では買い手側にとっては非常に不透明な部分もあります。

 

クオリティとコストの両方が大切な要素である場合は、プロジェクト開始時にマスタリング費用として現実的な予算を組んでおきましょう。インディアーティストの中には、プロジェクトが終わるまでマスタリングの存在をすっかり忘れてしまっている人もいます。そうなると、決してベストとは言えない品質で妥協せざるを得なくなります。自分の予算内で利用できそうなスタジオを調べておくのがよろしいでしょう。電話をかけてプロジェクトの内容を伝え、彼らのアプローチを聞き出してみましょう。スタジオの利用に必要な詳細が得られるばかりか、そのスタジオのカスタマーサービスがどれほどの品質なのかを感じることができます。品質保証のため無償で仮デモ音源を制作してくれるスタジオもありますが、このサービスを有償で行うスタジオもあります。いずれにしても、アルバム全体の費用をつぎ込むわけですから、使用するスタジオの仕事ぶりを耳で確認できるのは良い方法だと言えるでしょう。

 

機材 vs. エンジニアの才能

 

マスタリングにおいても、「大切なのは車ではなく、運転手」の図式が当てはまります。優れたエンジニアは制限を逆手に作業できますが、腕のないエンジニアは良い機材を使おうと使わまいと、それなりの結果しか残せないものです。だからといって機材を見過ごしていい訳ではありません。マスタリング用に開発された機材があるのとないのとでは、サウンドのクオリティ面でもエンジニアの仕事のしやすさおよび速さにおいても大きな違いが生まれます。それはイコライザやコンプレッサーなど「機材」といった表現から連想されるほとんどのプロセッサがこれに当たります。さらに高品位なコンバータやモニタースピーカ、エンジニアが作業するルーム環境などもこれに含まれます。こういった構成要素がすべて揃ってはじめてエンジニアは適切な判断を下せるというわけです。

 

ユーザーに特に経験がなくても、特定のプリセットや周波数カーブ、または他の方法ですぐに適切なマスタリングができると謳っているハードウェアおよびソフトウェアメーカーが市場に多くみられます。しかしこういった「レシピ」にはマスタリングの過程における大切なポイントがすっかり抜け落ちてしまっており、経験あるエンジニアの技術に取って代わることはできません。

 

マスタリングでは、各楽曲のミックスが持つ最も重要な要素を引き出してあげることが大切です。そのためには芸術的、また技術的な面での見極めが必要となります。EQ やコンプレッサーを設定するだけでは、その楽曲の個性を引き出すことにはなりません。

 

マスタリングにとってベストな「○○○」とは?

 

マスタリング関連のフォーラムで最も良く訊かれるのがこの種の質問です。答えは簡単。「ベスト」なものや一つ揃えておけばすべてに適応できるような解決策はありません。もしそれがあるとしたら、マスタリングスタジオは同じルーム環境、モニター、機材類を揃えて、まるでデパートのように全国チェーンを展開することでしょう。音楽スタイルや楽曲の個性に合わせてマスタリングチェインが変化するように、エンジニアのワークフローや好み(感覚)によって使用するハードウェアもソフトウェアも変わってくるのです。

 

とはいえ、マスタリングスタジオの間でもいくつかの共通点があります。以下に、私自身がユニバーサルツールであると考える内容を重要度の高い順に並べてみましょう。

 

- 識別力に優れた耳。音楽の楽しみと解釈の妨げとなる問題を批判的に分析できる能力こそ、マスタリング・エンジニアの最も大切なツールです。

 

- 知識と感覚。 ミックス音源に潜在する問題を見極められる技術的な知識、そしてどの技術を使って解決するかの感覚です。

 

- 確かなルームおよびモニター環境。 悪いルーム環境に置かれたモニタースピーカーは、良いルーム環境に置かれた悪いモニタースピーカーと同じで、どちらか一つの要素が欠けてもミックス音源の正しいモニタリングはできません。ルームとモニター環境がしっかり整っていれば、ミックスの音像が乱れてエンジニアが間違った判断を下すようなことはありません。

 

- 透明なマスタリングチェイン。 内科医と同じで、マスタリングにおける信条も「傷をつけない」こと、です。マスタリング・エンジニアは一切の努力を惜しまずに、歪みとノイズの発生しないマスタリングチェインを行います。各種ケーブルからソフトウェアやハードウェアに至るすべてのものが、マスタリングチェイン内で害を及ぼさないよう分析され、必要に応じて手を加えられています。

 

- 「色付け」処理。 前段の「透明なマスタリングチェイン」とは矛盾するようですが、音像を拡大するために歪みを加えるハードやソフトのことを述べています。これにはチューブディストーション、トランスフォーマー、テープサチュレーションといった新旧ハードウェア類や、またソフトウェアによるモデリング・アルゴリズムなどが含まれます。こういったプロセッサーを使用することで「デジタル」気味のサウンドに暖かみや太さ、奥行きを加えることができるのです。

 

エンジニアは「スタイル」をもとに選ぶべきか?

 

http://lasmejorescancionesdelahistoria.files.wordpress.com/2010/03/nevermind.jpg10 人のエンジニアを一つの部屋に入れて、まったく同じ機材で作業させたとしたら、10 の異なるマスター音源が完成し、しかもそのどれもが素晴らしいサウンドとなることでしょう。これらのエンジニアに今度は自分のスタジオで同じマスタリング作業させても、先程のまったく変わらない内容のマスター音源を作ってくることでしょう。どのマスタリング・エンジニアにも独自のスタイルがありますが、大切なのは、必要に応じて自分自身のスタイルとは異なった方法で作業ができることなのです。エンジニアは、一緒に仕事をしているアーティストに自分自身の個人的な趣味を決して押し付けてはいけません。繰り返しますが、ここがまさにクライアントとの意思疎通が非常に重要となる部分です。

 

優れたマスタリング・エンジニアは、多種多様なカテゴリの音楽に精通しているべきです。概して、優れたカントリー作品を手がけたことで知られるエンジニアが、優れたロック作品を作れないという理由はどこにもありません。エンジニアの仕事は音楽ジャンルを超越したものでなくてはなりませんが、あるマスタリング・エンジニアの音楽的嗜好がもしアーティストとしてのあなたにアピールしてくるのであれば、そのエンジニアを指名してみるのも手でしょう。大切なのは、エンジニアとアーティストがお互いを補足し合える形でコミュニケーションが取れるということです。

 

技術畑出身とミュージシャン出身、どちらのバックグラウンドがより重要?

 

マスタリング・エンジニアは、技術的にも音楽的にも熟練している必要があります。エンジニアの力量とは、良い音楽を知り、その良い音楽をより良い音で聞かせる術を知っている、ということです。そうは言えど、マスタリングの世界では技術的側面は非常に大切ですが、だからといってそれが音楽的美学の邪魔をしてはいけません。これと同様に、手がけている作品の音楽的内容に関してエンジニア自身がもつ個人的な感想は、最終的にはそのミュージシャン本人と直接話し合うべきでしょう。エンジニアの音楽的背景がエンジニア自身の力量の妨げになってはいけない、というのはまさにこれが理由です。

 

技術的な背景を持つマスタリング・エンジニアの中には、より明確なサウンドを達成するために自分自身で楽器に手を加えたり、または自分の好みや必要に応じてサウンドに色付けをする人もいます。音楽的な背景、特に音のピッチを意識できるエンジニアは、音程に関する周波数の問題を見極めることができるため、専門用語を使ってミュージシャンと直接この問題について話し合うことができます。

 

エンジニアは、音楽畑出身であろうと技術畑出身であろうと、出自の善し悪しをめぐる発言は控えるべきです。ほとんどのエンジニアは技術畑か音楽畑かのいずれかの出身ですが、彼らの力量は両者の組み合わせで発揮されるものなのです。マスタリング・エンジニアは、必要に応じて音楽的かつ技術的な側面からのアドバイスをしつつも、できる限り客観的な立場を保つことが大切と言えるでしょう。

 


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