Fender Kurt Cobain Road Worn Jaguar
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Fender Kurt Cobain Road Worn Jaguar

Kurt Cobain Road Worn Jaguar, JZ/JG モデルのソリッドボディエレクトリックギター from Fender in the Jaguar series.

public price: ¥1,179 VAT incl.
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Fender『Kurt Cobain Jaguar』詳細レビュー

カート・コバーン精神の継承
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ニルヴァーナのアルバム『ネヴァーマインド』の発売 20 周年を記念して、Fender からカート・コバーンが同作のレコーディング前に購入したと言われるギターの復刻モデルが登場した。

ニルヴァーナ・コレクターの一人が Fender にオリジナルのギターを貸し出し、これを受けた Fender がメキシコにて復刻モデルの生産を決めたものだ。しかし、このカート・コバーン・ジャガーモデルは、世間一般でのシグネチャーモデルやレリックモデルの人気もあり、「グランジ精神に反する!」と発表前から騒ぎ立てられた。このギターは果てして「本当の楽器」なのだろうか、それともただ単に有名な左利きロックスターの名を利用した「ビジネスアイディア」の一つに過ぎないのだろうか・・・。

ジャガーの歴史

Fender Jaguar Kurt Cobain

Fender のジャガーモデルは、1960 年代にフェンダーのエレクトリックギターの最高級機種として主にサーフミュージシャンを念頭に置いて製作されたものだ。このギターは主に 2 つの独立した電子回路で構成されていた。リード用となる回路は、ボリュームおよびトーンコントロールを一つずつと 3 つのスイッチ(2 つのスイッチはピックアップ切替用で、もう一つはローカットフィルタ)を搭載。ギターの左側にあるスイッチを切り替えると、リード用からリズム用の回路に切り替わり、ボリュームおよびトーンコントロールでネックピックアップの調節ができた。しかし、このジャガーモデルは大きな成功を収めることなく、1970 年代にはフェンダーのカタログから姿を消した。90 年代の時点でも、このジャガー(さらにジャズマスターおよびムスタングも)はすでにビンテージとしての扱いを受けていたが、当時はそれほど高価ではなかった。だがグランジの波がチャートを席巻し、特にカート・コバーンの登場後、その価格は高騰し、Fender は同モデルの再生産を開始。ジャガーと(コバーンが大好きだった)ムスタングの間の子となる「ジャグスタング」—カートが Fender と共に開発したモデルだ—を思い出す人もいるだろう。しかし、カート本人は自身のシグネチャーモデルをゆっくりと楽しむこともなく、本機のプロトタイプが手元に送られてきた後、自ら命を絶った。

自然体 — カム・アズ・ユー・アー

Fender Jaguar Kurt Cobain

それではカート・コバーン・ジャガーを詳しくみていこう。ボディ材はアルダー。ネックは 24 インチでメイプル製、指板はローズウッド製の 22 フレット仕様。オリジナル機とまったく同じスペックだ。ブリッジはアジャストマチックで、ジャガータイプのアーム着脱式のトレモロを採用。パッド式のミュートは装備されていない。メキシコ製のフェンダーレリックギターの品質基準でもある「ロードウォーン」加工が施されており、ネックプレートには、カートの直筆による "Fender" ロゴが刻印されている。ジャガー本来のシングルコイルに代わり、カートが購入した時点でオリジナル機にすでに搭載されていた DiMarzio の PAF をフロントに、同 Super Distortion をリアに搭載。ローカットフィルタを含む 3 つの切替スイッチに代わって、Gibson タイプの 3 ウェイトグルスイッチを装備。そして新たにボリュームコントロールが一つ追加されている。結果的に、オリジナル同様 2 つの独立した回路で構成された形となる。リード用の回路では両ピックアップ用に独立したボリュームコントロールとトーンコントロール、それにピックアップ切替用の 3 ウェイトグルスイッチが使える。リズム用回路ではフロントピックアップのみが使用される形となるが、ボリュームとトーンの各コントローラーが使用可能だ。これだと例えばフロントピックアップを使用した 2 つの異なるセッティングを即座に切り替えることができたり、フロントを音量ゼロにしてトグルでキルスイッチ効果を出したり、はたまたリードからリズムに切り替えてもフロントピックアップの音量を上げ忘れたなんていうアクシデントも起こさずに済む。これは便利だ・・・。このギターはメキシコ製といってもハイエンドな部類のフェンダーメキシコモデルとなるため、標準的な品質とフィニッシュのギターというありふれた印象は受けない。

グランジ精神の継承なるか?

私はニルヴァーナ世代の人間だ。彼らの音楽を本気で聴き始めたのはすでにバンドが解散してからだが、カート・コバーンの生き様は私自身にも多かれ少なかれ影響を与えている。想像していただけると思うが、このギターを手に取った時、興奮したのと同時に若干不安にもなった。しかし、落胆することはなかった。これまでにも自分でメキシコ製の「より品質の劣る」ジャガーを数本所有してきたため、このギターを初めて手にした時、その質の高さに驚いた。まずその重量。フェンダーメキシコ製の他のギターよりも遥かに重い。次にその頑丈な作りと木材の堅さに気がつく。例えば 6 弦のチューニングを一気に下げてもネックがまったく反らない。ギターを手で何度か叩き楽器の共振を確かめたり、弦を激しくチョーキングしたりかき鳴らしたりしてチューニングの安定性を確認したが、すべて問題なかった。まるでギターが「心配するな!」と言っているかのようだ。

Fender Jaguar Kurt Cobain

クリーンサウンドだと、ジャガーに典型的な音域の狭い、と同時に完全にニルヴァーナを彷彿させるサウンドが得られた。6 ~ 4 弦は他の高音弦より鳴りが大きい印象だが、その分ストラミングの際に高域が前に出過ぎずとても良い。効率優先このギターはスケールが短い上に、弦高も低く、ネック半径もフラット (9.5") なため非常に弾きやすい。ワイルドな演奏をしてもチューニングが狂うこともなく、よく考え抜かれた作りとなっている。分厚く反りやすいオールドストラトのネックと異なり、このギターではピッキングの強弱に神経を集中することなく思い切り演奏を楽しむことができる。だからと言うべきか、ストラトのネックほど幅広いダイナミックレンジはない。要するに、このカート・コバーン・ジャガーは、洗練されたブルース/ロックリフというよりはむしろストラミングやアルペジオに適したギターということになる。両ピックアップのバランスも見事だ。フロントの PAF では丸みのある音色が出せ、リアの Super Distortion ではより音量レベルの高い、タイトだがブライト過ぎないサウンドが楽しめる。両ピックアップを併用すれば、非常に透明感のある素晴らしいサウンドが達成できる。

Fender Jaguar Kurt Cobain

歪ませて使えば、このギターはその破壊力を増す。簡潔かつ効率の良いギターだ。間違った弦を弾こうが、違うフレットポジションを弾こうが、お構いなしだ。 一つのスイッチでディストーションの効いたサウンドとクランチサウンドを簡単に切り替えられるのは大いなるプラスだ。逆に、フィードバックを発生させて、トグルをキルスイッチとして使用すれば、カートが愛したフィードバック効果によるノイズ奏法が再現できる。フロントピックアップを歪ませすぎるのは難点だ。切れ味の悪いサウンドになってしまう。両ピックアップの併用は、歪ませてもソフトさとウォームさを兼ね備えた心地よいトーンとなる。リアピックアップに関して説明は不要だろう。ハイゲインアンプとの相性が抜群の有名なピックアップだ。

このギターを自宅でゆっくりと試奏する機会が得られなかったため、試奏の場で小型の Zoom『H4』を Fender の『Supersonic Twin』アンプから 約 1 メートルほど離してサウンドサンプルの録音をせざるを得なかった。 カートは『Nevermind』の頃は主に Mesa Boogie を使っており、フェンダーアンプは使用していないが、それでもこのギターがオリジナルとまったく同じ木からではないにしても、同じ種類の木で作られているということが分かる音色を出してくれた。以下のサウンドサンプルをニルヴァーナの『Live at Reading '92』の音色と比較してみて欲しい。グランジ精神、ここにあり!

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クリーン、クランチ、ディストーション、フィードバックなど、すべてのピックアップコンビネーションで録音したデモ音源

評価

オリジナルとなる 62 年製のジャガー(ピックアップと回路の改造込みで 3000 ドル程度か)の持つ「マジック」はないが、それでもこのカート・コバーン・モデルは非常に良くできたギターだ。堅牢で、強力な個性を放ち、美しく、ノイジーで野性的だ。かなり多様性に富んだギターではあるが、ジャズやブルーズ、メタルを弾くために生まれてきたギターではない。ポップやオルタナ、ロック、ポストロックといったジャンルにおける「音の破壊屋(サウンド・デストロイヤー)」にとっては最高のパートナーとなってくれるであろう。もちろんこのギターは左利き用も用意されている。

Pros Cons
  • ニルヴァーナの精神(君がこのバンドを好きなら)
  • 堅牢さ、反らないネック
  • 適度な重量
  • 2 つの独立したピックアップ回路
  • メキシコ製としてはやや割高
  • 慣れ難い回路構成
  • 各コントロール類へのアクセス