TC Electronic BH500
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BH500, ベース用アンプヘッド from TC Electronic in the BH Amps series.

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TC Electronic『BH500』および『BC210』詳細レビュー

デンマークの赤い旗手

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近未来的なデザインの『RH450』を発表して以来、デンマークに拠点を置く TC Electronic はベーシスト向けの製品を開発し続けている。

ほんの数年の間に同社の製品カタログには 5 種類のベース用アンプヘッド、8 種類のキャビネット、そして 5 種類のコンボアンプが新たに加わった。10 年前にはベースアンプ市場に存在すらしなかったこのブランドは、今やまさに聖職者の様相を呈してきた。 一言付け加えておくと、TC Electronic のギターアンプ部門ではこれといって大きな動きが見られない。これは特に同社エフェクターの長年に渡るファンにとっては嫉妬と誤解の元になりかねない。

 

1976 年にキムとジョンの Rishøj 兄弟が設立したこの会社は、ギター用エフェクターの分野でまず知られるようになった。そしてエフェクトペダルからラックプロセッサーの開発へと推移し、現在ではスタジオ機器からポストプロダクションおよび放送用機材、デジタル PA 機器まで幅広く取り扱っている。

 

これまで同社はよりモダンな特長を持ったアンプ製品を発表してきており、コンパクトで軽量、プリアンプにはプリセットメモリーが搭載され、フロントパネルは LED がずらりと並ぶ革新的なデザインのものが多くみられた。しかし、最先端技術を嫌い、必要最小限のシステムを好む古典派のロックベーシストを惹き付けるために、TC は彼ら好みのアンプを開発した。デカくて重く、ツマミ周りに LED のない赤いパネルのオールドスクールなデザインのアンプだ。

 

最小限に非ず

TC Electronic BH500 & BC210

それでは『BH500』を詳しく見ていこう。どうやら「必要最小限」という表現が適切なわけではなさそうだ。まずフロントパネル。コンプレッサー、4 バンド EQ、内蔵チューナー、コンツァーコントロール、チューブアンプシミュレータ、高域フィルタ、さらには 3 つの設定を保存可能なメモリーで、ぎゅうぎゅうに埋め尽くされている。さらに、アクティブ/パッシブ兼用の楽器入力、RCA 端子による AUX 入力、ヘッドフォン出力、そしてダイレクトアウトまでもがこのフロントパネルに収められているのだ。リアパネルにはアンプのオン/オフスイッチとスピーカー出力 1 系統のみが装備されている。リアパネルにはまだこんなにスペースが残ってるのにスピーカー出力はなぜ 1 系統しかないのか?

 

製品名が示唆するように、このアンプヘッドは 4 オームで出力 500 ワットを誇る。このレビュー用に送られてきたスピーカーキャビネットについても同様に見ていこう。『BC210』には Eminence 製ツイータと、同じく同社製の 2 発の 10 インチ・スピーカーが搭載されている。出力は 8 オームで 250 ワットだ。リアパネルには 2 つのかなり大きなバスレフポートが用意されており、安定した空気の流れを約束してくれる。優れたベースキャビネットの出力は、バスレフポートの大きさで決まる、と以前祖母が良く言っていたものだ。この『BC210』なら祖母も満足してくれていただろう。このバスレフポートはハンドボールが入るほど大きいのだから。キャビネットのサイズは W462 x H662 x D380 mm で、重量は 19 kg となっている。一方のアンプヘッドの重量は 13 kg だ。ふたつ合わせて 32 kg。自分のような若くてワイルドなロックベーシストが背中の筋肉を鍛えるには十分な重さだ。

 

TC Electronic BH500 & BC210

両製品共に生産国が異なっている。アンプヘッドはタイ製で、キャビネットは PRC 製、つまり中華人民共和国製だ。この「PRC 製」という表現、「中国製」に取って代わる新たなトレンドになるような気がしてならない。重要な詳細だが、アンプヘッドは木製のキャビネットに包まれており、黒のトレックスカバーが施されている。キャビネットにも同じカバーリングが施されているため、特に保護カバーのようなものは不要だろう。アンプヘッドにもキャビネットにも計 8 つのゴム製パッドが取り付けられているため、立てても横にしても使用することができる。

 

システム全体が自信に満ちた印象を与えてくれる。コントローラー類の質もしっかりしており、フィニッシュも完璧なようだ。両製品共に実に頑丈そうだ。 黒と赤のカラーコンビネーションが発するパワーは半端じゃない。リハーサル時にヴァイキングな気分になってしまいそうだ。例えば、私は同じような赤色をした下着を持っていて、彼女が大喜びしてくれるから頻繁にはいているんだが、不思議なことにこれをはくと、即座に映画『未来惑星ザルドス』のショーン・コネリーになった気分になるのだ。まぁこんな下世話な話はこの辺でヤメておこう。ではそろそろ、隣はもちろん上下階に住む隣人にも合わせて重低音を聞いてもらうことにしよう。

 

雷神現る!

TC Electronic BH500 & BC210

まず大好きな 5 弦モデルのフェンダー・プレシジョン・ベース・デラックスを接続する。私はアンプ、特にコンパクトタイプのアンプをテストする際は、標準の E 弦よりも低音が出せるベースを使うように心がけている。それによってスピーカーの安定度合いもチェックすることができるからだ。このレビューでは、Beyerdynamic の『M88』ダイナミックマイクを Novation 製インターフェイスに接続してキャビネットの音色を録音している。ダイレクトサウンドのレコーディングと自宅の振動を防ぐために DI 出力も使用した。残念ながら経費と彼女の了解が得られないため、まだ防音スタジオを作ることができないでいるのだ。恋人がいるとその分犠牲も増えてしまう。 彼女を持つ貧乏人アーティストは、彼女をとるか、バンド練習をとるかのジレンマにしばしば悩まされるものだ。 今日は一人で自宅にいるため、普段のリベンジも兼ねていつもより大音量でベースを弾いてみよう。大音量での演奏はなにより楽しいし、隣人にまた「音量下げろ!」と言わせしめる絶好のチャンスだ。

 

最初の印象:出力レベルをたったの半分上げただけでもアパートの壁を震わせるほどの大音量だ。つくりも堅牢だし、たった 10 インチのドライバー 2 発の割には音がデカイ。しかし、私のベースのデュアルコイル・ピックアップをもってしても、スピーカーをオーバーロードさせることはできなかった。最初の一音から、Eminence スピーカーの特徴的な音色が自分の若かれし頃を思い出させる。最近では、ネオジムマグネットを使ったスピーカーが多く、自分も Epifani スピーカーキャビネットを使っていたことがあるため、その音が嫌いというわけではないのだが、このどこかビンテージの香り漂うサウンドはやはり聴いてて快適だ。EQ の操作も簡単。

 

ポットの効きも良く、些細な調節でもサウンドにしっかりとした変化が生じる。しかも複雑すぎない音色だ。4 つの EQ 帯域に 4 つのコントローラー。明快。2 段階コンツァーコントローラーとブライトネス(明るさ)コントローラーでも音色の微調節が行える。コンツァーフィルターは 2 つの LED を備えたプッシュボタン式となっている。このボタンを一回押すと中域が弱まり (LED 1)、二回押すとカットされる (LED 2)。三回押すとバイパスとなり、両 LED は消灯する。Tweeter Tone コントローラーは高域のブーストおよびカット用だ。これはツイーターの音量を単純に変えるだけでなく、サウンド的にもより音楽的な高域のコントロールを行うものだ。つまり、これによって DI アウトからの信号自体にも変化が生じるわけだ。結果も上々。 Hi-Fi から「ビンテージ」サウンドまで簡単に再現できる。

 

 

Doigts slap reglage 1
00:0000:48
  • Doigts slap reglage 100:48
  • Mediator Reglage 200:28
  • Slap Reglage 300:23
  • Sature00:32
  • Rock Reglage 500:32

 

 

コンプレッサーとチューナーも内蔵されている。内蔵コンプレッサーに対する感想は一言でまとめられる:良いコンプが欲しければ、良いコンプペダルかラックを購入した方が良い。いや、決して悪口を叩いているわけではないのだ。これはこれで音を削ることなく圧縮してくれるし、LED メーターを使って簡単にコンプ設定も行える。全然問題はない。ただ、これで驚くほど優れたサウンドは達成できないだろう。繰り返すが、良いコンプが欲しいのなら、それ相当のものを買うのがベストだ。コンプ用の LED はチューナーとも兼用で、B 弦から G 弦用のチューニングに対応した 5 つの LED が用意されている。チューナーをオンにすると信号は自動的にミュートされる。LED の視認性も優れており、アンプから 10 メートル離れていたり、メガネを忘れたりしなければ、問題なくチューニングできるはずだ。 この機能は絶対音感を持たないミュージシャンにとっては便利だ。次は TubeTone 機能をみていこう。これはプリアンプ部とパワーアンプ部の両方を再現するもので、たった一つのツマミで両方のシミュレーションを楽しめるようになっている。

 

果たしてその性能はいかほどか?もしあなたがまだ子供心をもったケチの少ないミュージシャンなら、この機能で倍音を増やしてクリーンサウンドに暖かみを加えて楽しむことができるだろう。しかし、これはリニアに反応することで知られるチューブアンプ製品とは逆の性能を有していることになる。コントローラーを 0 から 3 辺りに設定すればふくよかな低中域が得られ、4 以上ならクランチ、7 以上ならディストーションがかかる。私は歪みの専門家じゃないが、このディストーションはかなり良い感じだ。極端な設定でもウォームで精確な信号が得られる。このツマミは、まさにハーモニクスを信号に加えてチューブ特有の歪みを再現するためのものだ。

 

TC Electronic BH500 & BC210

このアンプヘッドのもつ究極の機能は、最大 3 つの設定を簡単かつ自由に保存できるプリセットメモリーだ。保存先となるメモリーボタンを押し続けるだけで、現在の設定がそっくりそのまま保存される。ただし、ミュートやマスターボリュームの設定までもが保存されるので注意が必要だ。私はボタン一押しでプリセットのクリーンサウンドからハイゲインに切り替え、ボリューム設定は同じだったにも関わらず、アンプ前から弾き飛ばされそうになった。それ以来、不整脈になったようだが気のせいだろうか。このプリセット機能は使い勝手は簡単だが、必要最低限の性能というわけではない。プリセットを使いたくない場合は、フロントパネル場で直接設定を変えてしまうと良い。

 

それでは、プリセットがあるということは、プリアンプ部はデジタルなのだろうか?実は私も分からないのだ。アンプヘッドを開けてみる機会がなかったため確認できなかったが、付属の技術仕様書にもその旨は記載されていなかった。しかし私の耳には、アナログサウンドのように聴こえる。もちろん個人的な意見だ。この製品はロックベーシスト向けとして紹介されており、TubeTone 機能による異なるサウンド特性の再現と Eminence スピーカーの持つトーンカラーは、まさにそういった音楽性にぴったりだろう。しかし、このスタックはどの音楽ジャンルにも対応できる多様性をも持ち合わせている。ハードロックベーシストからグルーヴプレイヤーまで幅広いミュージシャンに魅力的なモデルだ。

 

アンプヘッドは、スピーカーに接続しないでスタンダロンでも使用できる点が嬉しい。アンプによってはインピーダンスの問題からスピーカーに繋げないで使用すると煙を出す場合がある。アンプ所有者にとっては痛々しい光景だ。このアンプヘッドでは問題ない。ヘッドフォンもしくは DI を使用する場合は、自動的にパワーアンプ段のスイッチが切れるようになっているのだ。

 

手頃な価格

10 インチスピーカーとツイータを備えたスピーカーキャビネットが 350 US ドルで、500 ワットのアンプヘッドが 500 US ドル。この価格は非常に手頃だ。この値段なら、例えば 2 x 12 インチや 4 x 10 インチのキャビネットをもう一台買いたいと思うかも知れない。この価格でこの品質なら気になるのも無理はない。このスタック製品によって、TC の製品レンジにまた新たな可能性が見えてくる。TC Electronic は、モダンな性能と機能を備えつつも、より伝統的なスタイルのベーススタック製品を提供してくれている。

 

  • 価格相応の価値
  • 設定の保存が容易
  • ディストーション
  • 内蔵チューナー
  • スピーカーの音色
  • アンプヘッドの重量(木製キャビネットに包まれているので重いのは当然だが・・・)
  • コンプレッサーは使えるが、それ以外は・・・。
  • キャビネットにツイータの設定がない点(その分フロントパネルに Tweeter Tone コントローラーを搭載)
  • アンプヘッドに 1 基のスピーカー出力しか装備されていない点