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AKAI『Miniak』詳細レビュー

現代版バーチャル・アナログ・シンセ
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Alesis ブランドの立て直し後、Numark 社は一連のシンセ/ドラムマシン製品の命運を Akai に託したようだ。この『Miniak』は Akai 名義による最初の「現代的な」 シンセ製品となる。

アナログの時代がとうに過ぎ去った今、ミュージシャン達は改めてアナログ機の凄さを再認識し、そして崇め始めた。プリセットベースのデジタルワークステーション製品を世に送り出したメーカー各社が、今度はデジタルモデリングという形でアナログ機器を蘇らせた。しかし、アナログ機のリアルな操作感覚をデジタルでも再現するためには、使い勝手の優れたユーザーインターフェースデザインが肝となる。そういう意味では、真にプログラム可能なポリフォニック・アナログシンセを開発したメーカーはないに等しい。しかし、その例外となるのが Alesis 社だった。彼らは、幾多の困難にもかかわらず、今から 10 年前に歴史上最も強力なアナログシンセを発表した。それが『Andromeda』だった。偉業である。しかし、これは同社にとって命取りにもなった。Numark 社が 2001 年に同メーカーを買収、『Andromeda』の市場価格を大幅に下げ、新たに一連のアナログ・モデリング・シンセ製品を発表したのだ。

こうして 2003 年、8 ボイス、3 オシレーター、2 マルチモード・フィルターを搭載し、フロントパネルに幾多ものツマミ類を配した『ION』アナログ・モデリングシンセの登場となる。同機の低価格モデルの登場は時を待たなかった。翌 2004 年、『ION』と同じサウンドエンジンを搭載し、さらにエフェクトセクションをも追加した新機種『Micron』が発表された。しかし、フロントパネル上からツマミ類を省いたそのコンパクトなデザインは、決して操作性の高いものではなかった。Numark は同年 Akai Professional をも買収、即座に一連の MPC (Music Production Center) 製品の「仕切り直し」を行った。そしてこの『Miniak』の登場と相成る。Akai 名義で発表された Micron シンセだ。果たしてこれは単なる「集金活動」なのか、それとも 2 つのブランドの戦略的な立て直しを意味しているのか。いずれにせよ、今二十歳未満の人は、この『Miniak』こそを Akai の最初のアナログシンセと認識することだろう。運が良ければ、我々の誰かが Akai の最初のシンセは『AX80』(1985 年発表!)だったと記憶に留めておいてくれるかもしれない。

 

新しいインターフェースデザイン

Akai Miniak

金属製のボディ上部に黒の塩ビ (PVC) ハウジングを持つこの『Miniak』は、これまでの製品とは異なるルックスをしている。製品は台湾製。製造品質の高さはお見事だ。5.4 kg という重量も、製品の堅牢さに拍車をかけるようだ。コンパクトな機器としてはかなり重い方だろう。『Micron』の軽量なアルミボディと比べたら、大きな違いだ。フィニッシュは完璧。シルクスクリーンもエンコーダも金属軸でしっかりとボディに固定されている(左下の写真を参照)。XYZ エンコーダはサウンド・シンセシス・エンコーダに割り付けができ、12 ビット(4096 階調)の解像度を誇る。4 つ目のエンコーダは「DATA」と名付けられており、プッシュ機能を備えたこの回転式コントローラーを使って「メニュー」と「パラメータ」編集の切替が行える。

Akai Miniak

プレイモード、シーケンストリガー、ボリュームコントロールの他に、3 つのホイールが用意されており、うち一つはピッチ用、残りの二つは自由にアサイン可能なモジュレーション用のホイールとなっている。セミウェイテッドな 37 鍵キーボードはベロシティ対応のシンセアクションとなっており、鍵盤のレスポンスは非常に素晴らしく、演奏性も高い。フロントパネルには、付属のグースネック・マイクなどのダイナミックマイク接続用の XLR キャノンコネクタが装備されており、AC アダプタ端子、電源スイッチ、バランス型 TRS ステレオ入/出力、ヘッドフォン出力、2 つのペダル入力、MIDI In/Out/Thru、盗難防止用セキュリティスロットといったその他の端子類はリアパネルに配置されている。『Micron』同様、このシンセにも残念ながら USB ポートは装備されていない。

 

面倒な編集作業

Akai Miniak

スタートアップは実に簡単。「PROGRAMS」ボタンとバンク選択用のキーを同時に押して、回転式コントローラーでプログラムをブラウズするだけだ。あとはキーボードを弾いてリズムパターンやアルペジオをトリガーするのみ。テンポの調節は「TAP TEMPO」ボタンで行う。3 つのサウンドパラメータの編集は、アサイン可能な XYZ エンコーダ、もしくは 3 つのホイールでできる。オクターブ移調用の「UP」と「DOWN」ボタンを使えば、最大 +/- 3 オクターブまでの移調が可能だ。これはライブで威力を発揮しそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Akai Miniak

 

一方、編集作業にはストレスが溜まる。アサイン可能な 3 つのエンコーダを除き、すべての設定をメニューページから行わなければならないからだ。ここで再び「PROGRAMS」ボタンを押しながら、編集したいセクション(オシレータ、プリミックス、フィルター、アウトプット、エンベロープなど)のキーを押す。「DATA」エンコーダを使ってメニューページをブラウズし、パラメータの編集時にはこのエンコーダを押す。再び一覧ページに戻りたい場合はもう一度このエンコーダを押す。この一台に搭載された編集可能なパラメータの数を考えると、専用のエディターが用意されていないのは正直かなり厳しい。しかし、不平を言っても無駄である。Akai はこれに関して何も提供してないのだから。とはいえ、こちらに HyperSynth による Windows 専用の VST/スタンドアロン・エディターを紹介しておこう:http://www.hypersynth.com/miniak-editor.html (編集部も未使用だ)編集機能以外でも批評しておきたいのは、バックライト LCD ディスプレイがたったの 2 x 16 列しか用意されておらず、限りない数のパラメータの編集用としては明らかに小さすぎる、という点だ。 明るさのコントラスト調整ができるとは言え、ディスプレイ自体がパネル奥に設置されているため、ディスプレイの真上に顔を近づけないとほとんど読み取ることができない。

 

ワイドなサウンドレンジ

Akai Miniak

『ION』と『Micron』同様、この『Miniak』も 8 ボイス 24-bit アナログモデリング技術を採用したデジタルシンセだ。8 ボイスじゃ大したことはない、という人もいるだろう。しかし、Akai は音質と音の深みに徹底してこだった。一度使ってみれば、この意味が分かっていただけるはずだ。『Miniak』を編集部で最初に使った時に、その音質の高さと多様性には本当に惹き付けられた。そのオーセンティックな音色は、市場にあるすべてのアナログモデリング技術の中でも最高の部類に属するだろう。13 カテゴリある 1000 個のプログラムメモリーとマルチのうち、600 個に優れた音色のパッチが用意されている。レゾナントフィルターを備えたパッド (Pad 1, 2 & 3) こそは、『Miniak』のハイライトと言えよう。しかし、ストリングスやブラス、ベースシンセ、リード、パーカッションから SE 系まで、どれも使える音に仕上がっているは嬉しい。サウンドが、昔のアナログシンセと比べると線こそ細目だが、より安定しているのは明らかだ。しかし、『Miniak』の音色には、ミックスに埋もれない存在感がある。リアルタイムでの編集作業も非常にスムーズだし、デジタルノイズも発生しない。ハイ/ローの両周波数帯域もバランスがよく、エイリアスも発生しない。見事な処理能力だ。

 

 

 

Miniak pad 3
00:0000:17
  • Miniak pad 300:17
  • Miniak pad 200:23
  • Miniak pad 100:27
  • Miniak strings 100:20
  • Miniak strings 200:23
  • Miniak brass 100:10
  • Miniak brass 200:44
  • Miniak bass 100:18
  • Miniak bass 300:20
  • Miniak bass 200:17

 

オシレーター・トリオ

Akai Miniak - Signal path『Miniak』には「PROGRAM」「SEQUENCES」「RHYTHM」「MULTI」の 4 つのモードがある。「PROGRAM」モードでは、『ION』(「Audio signal path」ボックス参照)で初登場したサウンドエンジンをフルに活用でき、エフェクト(下記参照)の音色も良くなるようだ。8 ボイスそれぞれに 3 基のオシレータとノイズジェネレータを搭載。各オシレータは、サイン波、のこぎり波、パルス波の 3 つの異なる波形を持っており、各波形のウェーブ・シェープ(形状)のアジャストやモジュレーションによる連続的な可変も行える。フィルターを使わなくても多彩な音作りができるという訳だ。より生々しい音色にしたい場合は、ドリフト機能を使って昔の VCO の変動特性を再現することも可能だ。

 

強力なフィルター

『Miniak』には 2 つのマルチモード・レゾナントフィルターが搭載されており、各フィルタには Oberheim や Minimoog といった名機のモデリングを含む計 17 種類のモードが用意されている。どのフィルターも非常に音楽的な内容だ。あらゆるモデリングシンセの中でも最高のデジタルフィルターセクションと言える。信号はフィルター出力からミックス段へと送り込まれる。ここで各フィルター信号とダイレクト信号がまとめられ、ステレオバスへと送られる。ここでドライブ系の 6 種類のエフェクト(コンプ、RMS リミッター、チューブオーバードライブ、ディストーション、チューブアンプ・シミュレーション、ファズペダル)をかけることができる。繰り返すが、この信号処理ステージは非常に良くできている。

 

 

 

使えるエフェクト

Akai Miniak

エフェクトセクションは 2 系統に分かれている。1 系統目のプロセッサは、アンサンブル・エフェクト(コーラス、フランジャー、フェイザー)とボコーダ用だ。エフェクトごとに 6 ~ 7 つのパラメータを備えた 6 つのアルゴリズムが用意されており、フレーズは内部/MIDI クロックに同期可能だ。最初の 4 つのエフェクトパラメータは、マトリックスを使用してモジュレートできる(下記参照)。ボコーダモードでは、20 バンド x 2 の計 40 バンド・ボコーダが使用可能となり、これは外部入力音とも共に使用できる。パラメータは、「ソース」「オーディオレベル」「シビランス・スレショルド」など基本的な内容となっている。しかし、バンドの調節やパッチはできない。このボコーダの音色は、スタジオ向け 11 バンド・アナログボコーダのそれほど明瞭でもなければ、ファットでもない。2 系統目となるエフェクトプロセッサは、ディレイとリバーブ用だ。ディレイはモノ/ステレオ/セパレート(最大 680 ミリ秒)、リバーブはホール/プレート/ルームの 3 つのアルゴリズムが搭載されている。エフェクトごとに 4 つのパラメータのみが編集可能だ。ディレイタイムはクロックに同期可能だが、セパレートディレイの場合は左右チャンネルのディレイタイムが異なるため、同期はできない。この製品自体の価格を考えれば、なかなか良くできたエフェクトセクションと言えよう。悪くない。エフェクトはすべてグローバルなため、プログラムまたはマルチで保存可能だ。

 

強力なモジュレーション

『Miniak』には、数多くのモジュレーション機能が備えられている。まず 2 基の LFO は MIDI クロックとの同期が可能だ。周波数レンジは 0.01 Hz から 1 kHz(オーディオレベル)。使用する 4 種類の波形に応じて異なるトリガーモードが用意されている。「サンプル&ホールド」ジェネレータも搭載しており、これにはレベル調節用のフェードパラメータも装備されている。タイムとサステインの両パラメータを備えた 3 つの ADSR エンベロープもあり、各曲線の調節(リニア、エクスポネンシャル)も可能となっている。時間は 0.5 ミリ秒から 30 秒まで設定可能だ。エンベロープはベロシティに基づいてモジュレート可能で、「ノートトリガー」「フリーエボリューション」「ループ」「サステインペダルレスポンス」といった異なる演奏モードを用意している。

 

さらに、『Miniak』には 12 系統のモジュレーション・ルートがセットアップされており、37 の内部生成ソースと 78 のデスティネーションに自由にルーティングできるようになっている。モジュレーションソースには LFO、エンベロープ、コントロール、キーフォロー、ベロシティ、MIDI CC などがある。デスティネーションには、すべてのオシレータ・パラメータ、プリ/ポスト・フィルターミックス、カットオフ、レゾナンス、エンベロープ、LFO パラメータなどがある。すべて事足りるようだ。トラッキング・ジェネレータを使って、ソース信号の変更もできる。最後になったが、ポルタメントとボイスユニゾン機能が搭載されている点も忘れてはならない。果たして、これほど膨大な機能に対応できるコントロールサーフィスはいつ登場するのだろうか。

 

シーケンスとリズム

Akai Miniak

プログラムからリズムパターンを作るには、アルペジエーターとフレーズシーケンサーの 2 つのモードを使う。アルペジエーターには、「High」、「Low」、「High & Low」、「Alternate」、「Chords」、「Random」などいくつかのパターンが用意されており、1 から 4 オクターブまで対応している。シーケンサーは、選択したモードに関係なく、ノート以外にも 3 つのホイールの動きをリアルタイムで録音する。まずは長さ(1/4、1/2、1、2、4 小節)とステップ数(8, 12, 14, 16, 20, 24, 32, またはクオンタイズ無し)を選択することからはじめるが、クオンタイズ機能は非破壊編集となることに注意だ。入力されたノートは、小さなグリッドとしてディスプレイ上に表示される。ノート番号、長さ、ベロシティも同様に表示される。これらの値をステップ・バイ・ステップで編集することも可能だ。3 つのホイールの動きは一度録音されるが、編集はできず、削除のみができる。シーケンサーとドラムキットを使えば、完全なリズムパターン(「Rhythms」)の生成が可能だ。キーボードの左側に割り付ければ、リアルタイムでのトリガーも行える。単発のドラムは右側のキーボード 10 鍵にアサイン可能だ。ピッチバリエーションも保存できなければ、長さの変更もできないが、シーケンスのようなパターンのプログラムおよび編集ができる。すべてを Multi モードに送信すれば、ベースやリード、ドラムサウンドを含んだ複雑なパターンやアルペジオを作ることが可能となる。

 

フル・マルチティンバー

『Miniak』は 8 パートのマルチティンバー音源だ。「Multi」モードでは、複数のシーケンス、リズム、アルペジオを備えた簡単なプログラムやドラムキットが用意されており、各プログラムパートで、シーケンス番号、音量、パン、FX バランス、ピッチレンジ、移調、ラッチ On/Off 、さらに物理コントローラー(ホイール、XYZ エンコーダ、フットスイッチ)のパラメータ設定が行える。「Rhythm」パートでは、リズム番号、音量、FX バランス、キーレンジ、ラッチの On/Off 設定が可能だ。MIDI チャンネル・マネジメントはそれほど柔軟ではない。最初のチャンネルの番号を選択できるのみで、残りの 7 チャンネルは自動的に設定される。扱いにくさもマイナス点だ。編集したくても、パート間の切替が容易じゃないのである。繰り返しになるが、『Miniak』は編集するためではなく、(ライブで)演奏するために開発された楽器だと言える。

 

 

Miniak multi 3
00:0000:38
  • Miniak multi 300:38
  • Miniak multi 200:34
  • Miniak multi 100:44

 

結論

最後になるが、この『Miniak』はビンテージなアナログサウンドのみならず、モダンなテクノサウンドまでをも再現できるとてもコンパクトかつ堅牢で、実に賢い楽器である。『Micron』との最も大きな違いは、その外観のみと言えよう。しかし、『Miniak』ではコントローラー類の配置レイアウトが改善されており、操作性が向上している。『Miniak』は、世界中のステージで活躍するために開発されたライブ向けのモンスターキーボードなのだ。とは言え、一方でダイレクト編集のし難さという弱点もある。見方を変えれば、このサイズと価格なら、自ずとコントローラーの数も制限されて来るのである。そして思わずこんな夢を思い描くのだ。「いつかパネル上がツマミとボタンで埋め尽くされた『Maxiak』なんてものが出ないかな・・・」、と。

  • 音質と多様性
  • 強力なサウンド・シンセシス
  • 高解像コントロール
  • 堅牢な構造
  • コンパクト&ポータブル
  • 内蔵エフェクト
  • グースネック・マイク付属
  • パターンジェネレータ
  • リアルかつダイナミックなキーボード

 

  • 面倒な編集作業
  • USB ポート未搭載
  • 専用エディタ未付属
  • 不明瞭なボコーダ