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FXpansion『BFD3』詳細レビュー

3 倍の世界

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FXpansion が先日『BFD3』を発表した。同社製ドラム音源の最新版となるサード・バージョンだ。前バージョンの単なる改訂版なのか、それとも本格的なアップデートなのか。ただでさえ飽和状態にあるドラム音源市場において、このソフトの存在意義とは一体?これらを詳しく検証していこう。

ドラムのバーチャル再生は、音声合成とサンプリングの歴史の中で非常に特別な位置を占めていた。しかし、ここではドラムマシンの歴史については触れない。とても一つの記事でカバーしきれる内容ではないからだ。その代わりに、FXpansion が開発したバーチャル・ドラム音源『BFD』の進化の過程を辿って行くことにしよう。プラグイン形式のアダプタ(1999 年に VST-DX 専用のアダプタを発表)でビジネスをスタートさせた彼らは、その後 DR-005 と DR-008 という 2 つのドラムマシンを開発。両モデルとも当時はその高い機能性で注目された。

2000 年初頭、グルーヴを緻密に編集できる方法(ハードウェアとしてのドラムマシンを除く)は決して多くはなかった。マルチトラック・オーディオを提供するメーカーも中にはあったが(Discrete Drums, Reel Drums, Zero-G)、編集オプションはかなり制限されていた。他のメーカーはより詳細なキットをループ機能を交えて提供しており、その中には後に『DFH Superior』と姿を変える『Drumkit From Hell』(BFD の最大のライバルの一つだ)や Wizoo による『MixTended Drums』などがあった。その後、スタインバーグが MIDI グルーヴによるドラム・サンプル・プレーヤー『Groove Agent』でちょっとした革新を起こす。

テストマシン

MacPro Xeon 3.2 GHz
OS 10.8.5
Logic Pro X
BFD3, v.3.0.1.1

2004 年になると FXpansion が一体型ソフトとして最初の『BFD』を発表。それは当時の標準としては非常に巧妙なインターフェース内に、4 つの異なる方法(ダイレクトマイク、オーバーヘッド、 ルーム、フロアマイク)で録音された多数の音源、キットの異なる要素を編集可能なオプション、マルチアウト機能、さらにリズム・ライブラリが収められていた。彼らは徐々に専用の拡張音源を充実させ、『BFD2』を発表。Toontrack 社の『Superior Drummer 2』や『EZ Drummer』、Cakewalk の『Virtual Drums』、NI Kontakt 用『Abbey Road Drummer』、スタインバーグ HALion 用『Scarbee Imperial Drums XL』、XLN Audio の『Addictive Drums』、Arturia の『Spark』、Rayzoon の『Jamstix3』、Avid の『Strike』といった直接的な競合製品のみならず、Logic Pro X の『Drummer』のような DAW 内蔵ドラム音源とのシェア獲得競争にも熱気が帯び始めた。

それではこの最新バージョンの変更点および利点はどこにあるのだろうか。

FXpansion BFD3 登場

FXpansion BFD 3

まず一つ目となる真新しい点は、その他多数のソフトウェア・メーカーが踏んだ手順に従い、インストール用の CD/DVD が省かれていることだ。ダウンロード版と USB キー版(唯一のメディア・オプションだ)での販売となっており、どちらのオプションを選んでも定価は同じで 35,800 円だ。アップグレード版も用意されており、価格はダウンロード版が 15,800 円、USB キー版がメディア分価格が上乗せされ 17,900 円となっている。USB キー版を選んだ場合でも、ソフトウェアのダウンロードリンクがメールで送られてくるため、キーが届くまで待つ必要はない。FXpansion の見事な配慮だ。

今回のレビューではダウンロード版を選択した。インストールは 2 段階で行われ、まず始めにソフト自体のインストーラー、続いてサウンド・ライブラリ用の「ダウンロード・チケット」をダウンロードする必要がある。ソフトはスタンドアローン、もしくは RTAS/AAX/VST/AU の各形式に 32-bit と 64-bit で対応している。ライブラリのサイズは 38 GB(圧縮ファイル)で、インストール後は占有ディスク容量が 55 GB になるが、独自のロスレス圧縮によりこれで 155 GB 分の情報が扱える。オーサライズには最新の FX License Manager を使用した。クライアントの数が多かったせいか、ダウンロードにはかなり時間がかかった。これは編集部のインターネットの通信速度の問題ではない。

ソフトウェアのオーサライズにも若干問題が発生した。ソフトのインストール自体と、ヴァージョン 1 と 2 のファイル認識はスムーズに行われたものの、バージョン 3.0 を立ち上げようとするとオーサライズされず、新たに License Manager が立ち上がってしまった。このバグはバージョン 3.0.1.1 で修正されたようだが、今度は以前のバージョンのサウンド・ライブラリのパスに新たな問題が生じ、BFD3 をスタンドアローン・モードで立ち上げらなくなった・・・。解決策としては、BFD3 をプラグインとして開き、「Preferences」で以前のライブラリのリンクを解除し、すべてのロケーションをスキャンし直すことだ。ふぅ。問題が解決したら、いよいよ実際に使ってみよう。

一新したグラフィック

まずはじめに気がつくのは、外観がまったく新しくなっている点で、これにより BFD も FXpansion のその他の最新製品に近づいた印象を受ける。スクリーンショットからも一新されたグラフィックがご覧頂けると思うが、ナビゲーションもより明瞭になり、異なるオプションへのアクセスも論理的かつ迅速に行えるようになっている。

FXpansion BFD 3

最初の朗報は、サウンド・ライブラリが一新されている点だ。5 つの新しいドラムキット(DW、マスターワークス、パイステ、ジルジャン、タマ、グレッチ、ボスフォロスなど、さらに 7 つのコンフィギュレーションと奏法)に打楽器(カバサ、タンバリン、ハンドクラップ、ジャムブロック、カウベル)が計 118 種類、さらに 5 つの新しいアーティキュレーションが用意されている。

FXpansion BFD 3

二つ目の朗報は、以前のライブラリが認識される点だ。マニュアルでいくつかのファイルをインポートする必要があるかもしれないが、幸いにもすべての必要なツールを揃えたコンテント・ロケーション・ウィンドウが準備されている。

古いキットや楽器ピースをロードすると、アップデート処理が施され最新のものに差し替えられる。それ以降は即座に最新の内容がロードされる。プレファレンスの設定は時間をかけて行った方がいいだろう。ホストの動作や MIDI レスポンス、ショートカット、ソフト診断などを非常に効果的かつ正確に管理することができるからだ。BFD2 をお持ちなら、そのフォーマットを選択するのも忘れないように。そうしないと、以前のグルーヴ・ライブラリをインポートする際にソフトが奇妙な動作を見せるかもしれない。

上段のツールバーには、メニュー、より読みやすく実用的になったメイン・ディスプレイ、トランスポート機能、そしてメトロノームのみでなく、テンポや楽曲(FXPansion 社が呼ぶ「トラック」)の位置といった情報を表示するセカンド・ディスプレイに加え、マスター・ボリュームも用意されている。ダッシュボード・ボタンを押すとメインスクリーン上でアンチ・マシンガン機能にアクセスできる。これはスネアやキックを連打してもマシンガン・サウンドにならないようにする機能で、Loud(音量設定)と Tone(ティンバー設定)の両オプションで調節することができる。インターフェースの表示領域を拡大縮小できる小さな四角いスイッチも用意されているため、モニター使用時にはミキサーの状態がすべて見渡せると言う訳だ。ブラボー!

FXpansion BFD 3

メイン・インターフェースを閉じなくても、ブラウザから直接「Presets」、「Kits」、「Drums」、「Grooves」、「Auto」の各ページへアクセス可能となっており非常に実用的だ。「Presets」は、以前のバージョンと若干異なっており、全オプションのグルーピングが可能となっている。そのため、キットやミックス、選択したグルーヴやサウンドのマッピング、ピアノのパターン、オートメーション、グローバル・オプションといった情報を含めるかどうか選べるのだ。つまり、ワンクリックのみで楽曲を再生するために必要となる条件をすべてロードすることができるというわけだ。これは例えばライブ環境などで非常に重宝する機能だろう。

「Kits」はこれまでのバージョンとまったく同じだ。しかし、特定のライブラリのみを表示させたり、キットのロード時に Tweaks、Slots、Mixer の 3 要素をリセットすることができるようになっている。ドラムのサウンドはキックやスネアなどのタイプごとにそれぞれ個別にロードが可能だ。「Processed」ボタンを押すと Tech および Model オプション、またエフェクトで加工済みのサウンドのみを表示させることができる。BFD2 にもあったチャンネル・プリセットを改善させたような機能だ。

次に「Grooves」に関してだが、以前のバージョンからリズムが自動的にインポートされない場合は、「Set Up Content Locations」ウィンドウを開いてリズムを選択し、これを「Convert Selected Paths」ボタンで変換させる必要がある。大抵の場合はうまく行くが、キットやグルーヴがマッチせずチャンネルが空のままになるばかりか、あちらこちらのグラフィックにも問題が発生する場合もある。

最後に、「Auto」は BFD3 のパラメーターをホスト・コントローラーのそれに合わせるものだ。「Map To Next Free」機能のような裏技と共に「Learn」モードを使えば大幅な時間の節約にもなるだろう。

キック&ミックス

FXpansion BFD 3

ドラムエディターの画面中央は、これまで同様キット、エフェクト、グルーヴ・エディター、キーマップの各ページで構成されている。キットでは、ドラムを上部から見た図とミキサーが表示され、このミキサーにはまた個別にページが用意されている。エクスポートでは、現在使用しているチャンネルをオーディオとして好きな数だけ指定先に保存することができる。「Drag exports Audio Not Midi」機能のようにグルーヴから直接オーディオファイルをドラッグ&ドロップでき、特にスタンドアローン・モードでは便利な機能だろう。各ページを交互に切り替えることもできる。「Faders」はミキサー本体、「Effects」はチャンネルごとに使用可能な 6 つのエフェクトスロットとバイパス・ボタンを表示、「Sends」ではプリ/ポスト・エフェクトもしくはプリ/ポスト・フェーダーで挿入可能な 4 つのエフェクトセンドが表示され、「Tweaks」ではトリム、チューン、ダンプ、ミュート、ソロの各機能にすぐアクセスすることができる。エフェクトに関しては、Overloud 社の BReverb を補足する非常に優れたアルゴリズムを持った FXverb が搭載されている。また、ある特定のエフェクトに対して使用できる外部サイドチェインも新たに用意されている。

FXpansion BFD 3

「Tech」と「Model」の両ページには、いくつかの新しい性能が隠されている。トリムやチューニング、ブリード(他のパーツからのアンビエンス音)、アクティベーション、ボリューム、アンビエント・マイクといった見慣れた機能に加えて、新たにラウドネス・セクションが追加されている。これによって選択した楽器のベロシティやレスポンスを適応させることができる。役に立つのだろうか?いや、そうでもない。すべての楽器をフルパワーで叩く場合以外は、楽器のレスポンスは演奏に合わせてコントロールしたいところだ。いや、むしろダイナミクスの強弱は本職のミュージシャンに委ねようではないか。

「Model」ページには、ダンピングとチョーク・レスポンス以外に調節可能なコントロールが二つ加わっている。まずはシンバルのスウェル奏法だ。シンバルを素早く連打した時にレスポンスを和らげ、より人間味のあるサウンドにしてくれる。ここにはアマウント・コントローラー、針式のレベルメーター、そしてプリセットがそれぞれ用意されている。

「Paiste 2002 Power Bell Ride」を使用してスウェル奏法をした時のサンプルだ。最初にスウェル機能なしの音、続いてスウェル機能ありの音を聞いていただこう。8 分音符でテンポは 512 BPM、Logic のステップエディタ(以前のハイパーエディタ)を使った。

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FXpansion BFD 3

どうだろう、納得していただけただろうか。少なくともスウェル機能を使わなかった時よりは遥かに自然な響きだ。こういった奏法はドラムスティックよりマレットを使った方がより自然に聞こえる。もう一つのモデリング機能として「Tom Resonance(タムの共鳴)」がある。これはサンプル音源のレコーディング時に必要ならずして収音されてしまった物理的現象をシミュレートしたものだ。「Res Trim」は他のパーツが鳴った時に発生するタムの共鳴を再現するためのもので、「Spill Trim」はマイクからの音漏れレベルを調節するものだ。

以下は「Ludwig Stainless Steel Kick」を使用してタムの共鳴の有無を比較したサンプルだ。設定は「ノーマル」。最後はフロアタムでレベルをフルに廻しきった時の音だ。

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FXpansion BFD 3

これがモデリング技術で実現しているということは、こういった現象を考慮せずに録音された昔のライブラリにも同効果を適応できるということで、実際にやってみるとバーチャルの次元での話だがかなり説得力のある結果を得ることができた。

この記事では、「EnvShaper」や「Distortion」など同社の DCAM テクノロジーを用いた最新のエフェクトまでを詳しく取り上げることができなかった。この辺でレビューをまとめるために、最後に BFD3 収録のグルーヴを聴いていただこう。ピーター・アースキンやスティーヴ・フェローンらが実際に叩いた音源だ。

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結論

BFD3 はそれ自体を革新とは呼べないが—基盤となるコンセプトは前 2 バージョンで作り上げられたものだ—実証済みのソフトウェアのさらなる進化、と言うことはできるだろう。新しいキットは BFD の歴史と強く関連づいており、以前のライブラリを必ずしも必要とせずとも、旧モデルを完璧に統合することができる。それでいてブラシやマレットといった弱点がしっかり補強されている。Scarbee の『SID』や Toontrack の『Custom & Vitage』のような他社製ライブラリを使うことができる点も非常にありがたい。ジャック・マティアスが手掛けたグルーヴ・パックや、ドラム音源の可能性を広げる「Platinum Samples」にも同様のことが言える。

グルーヴ・エディタは本格的な制作ツールで、DAW のピアノロール以上に包括的な内容となっている。そして、プログラム用のショートカット(フラム、ロール、カンパニー)は大変驚くべきものだ。Overloud が「BReverb」でリバーブ・アルゴリズムのスタンダードをかなり高く設定したにもかかわらず、搭載された新しいリバーブも非常に素晴らしい内容だ。ミキサー上で自由にルーティング可能なバス機能も実にありがたい。

操作性とデザインの改善に費やされた労力は並みのものではない。より使いやすくなったことでユーザーは操作性に悩まされることなく創作作業に専念することができる。残念なのはスタンドアローン・モードでの動作が若干不安定な点だ。

まとめると、このサード・バージョンで BFD は最も包括的かつ強力なバーチャル・ドラム音源の座をキープすることができた、と言えよう。市場で最も直感的かつ純粋なドラム音源とは言えないが、性能の豊かさでは他に類を見ない。お見事、FXpansion!

オーディオファイルのダウンロード(FLAC 形式)

 

Pros Cons
  • 一新したデザインによる操作性の向上
  • より簡単になった操作性とアクセス
  • 新しいキット
  • ミキサー機能の改善とルーティング
  • 新しいグルーヴ
  • 強力な編集機能とサウンドデザイン
  • より多くのマイク録音音源
  • 見事なグルーヴ・エディタ
  • タムの共鳴やシンバルのスウェル奏法のモデリング
  • 旧ライブラリにも完全対応
  • 新しいリバーブ
  • エフェクト用サイドチェイン
  • やや不安定なスタンドアローン・バージョン
  • 旧キットとライブラリのインポート時の不具合
  • 選択したキットサイズ(エコノミー、フルなど)が保存されない不具合