Audient MICO
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Audient MICO

MICO, ソリッドステート・プリアンプ from Audient.

public price: ¥479 HTML
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Audient MiCO デュアル・プリアンプ詳細レビュー

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Audientのようなシリアスなブランドが真空管シミュレーション回路や位相調節ができてデジタル出力付きのデュアル・マイク・プリアンプを1,100ドル程度で出すとなれば、そのような製品に興味を持つホームスタジオ・オーナーは少なくないだろう。では、実際のところはどうだろうか?

Will Zégal 2008/09/17

Audient's MiCOをテスト

MiCO
MiCOという名のこの製品はハーフラック・サイズの横幅ながら、1U分の奥行きと高さがある。コンパクトで軽量なので狭いホームスタジオでも場所をとらないし、モバイル・レコーディングのために持ち運ぶのも容易だ。 本体がコンパクトなことからも判るように外部電源を使用するが、邪魔なアダプターではなく、2ピン・ケーブルに繋がった小さな箱から程よい長さのワイヤーでMiCOに電源を供給する。 Audientがフロントパネルに、移動時につまみを保護するハンドルを付けなかったのは残念だ。もし頻繁に持ち運ぶなら、MiCOを保護するための方法を考える必要があるだろう。それにこの製品にはそうするに値する。とりわけ外見は、ありがちな簡素なものにせずにプロ機材のルックスを持たせることに成功している。ヘアライン仕上げのフロントパネル、クロームのつまみ(金属製)とカラフルなボタン。MiCOの外見は日中でもスタジオの薄明かりの中でも、とても感じが良くエレガントですらある。

豊富な端子

MiCO
リアパネルには2つのコンボ・ジャック/XLR入力、2つのXLRアナログ出力、AES/EBU用デジタルXLR出力とS/PDIFコアキシャル出力、トスリンクとワードクロック端子を備える。MiCOは独自のA/Dコンバーターを持ち、アナログ/デジタル両方を出力する。サンプリング周波数はリアパネルのディップ・スイッチで変更するのだが、ラックに入れている場合には最も便利な方法とは言えないかもしれない。44.1kHz、48kHz、96kHz、またはスレーブ同期があり、ワードクロック入力に外部マスターを繋ぐことで192kHzまで扱うことができる。このようにMiCOは非常に柔軟で接続も容易だ。しかしながらクリッピングを確実に避けるためにコンプレッサーやリミッターを繋ぐためのインサート入力はない。 フロントパネルにはもうひとつ入力端子がある。ギターやベース等の楽器を接続するDI入力端子だ。DI端子にプラグを差し込むと背面のXLRやライン入力は自動的にオフになる。一方、両チャンネルは似ており、どちらも2つのクロームのつまみを持ち、左側がゲイン。これらのつまみのすぐ左に48Vファンタム電源ボタンと-10dBボタン(残念ながらDIモードでは使用できない)がある。2つのつまみの間には、-36dB、-12dB、-6dBを示す3つの黄色いLEDとクリッピングを示す赤いLEDのレベルメーターが見える。古き良き針のメーターほど厳密ではないが、これで充分。メーターの下にはローカットの2つのボタン。左は40Hz、右は80Hz、そして両方同時に押した場合は120Hzまでをカットする。そして逆相ボタンと最後のボタンは各チャンネルの特別な機能を起動し、右のつまみで調節するようになっている。 これらはとても明快で判りやすく、簡単に使用できる。ボタンが光るので現在のセッティングが一目瞭然だ。しかしボタン同士の距離が狭いため、少しだけ慣れが必要かもしれない。難しいことはないのだが、ハーフラックのパネルにつまみとボタンを詰め込んでいるのでフルラックサイズと同じようにはいかない部分はある。 つまみがやや軽くて、丸くなく平たいことは弱点だ。つまりこの形状のつまみだと調節する際に手を回転させることになる。その際他のつまみに指が当たりやすく、意図せずセッティングが変わってしまうのだ。これは特に左手で調節する際にゲインつまみに当たりやすい。このように簡単に動いてしまわないようにもう少し固いつまみだったら良かっただろう。多少注意が必要な点だ。

サウンド

特別な機能について言及する前に、MiCOの基本的な音質について話そう。答え:本当に良い。サウンドはクリアで、過度に冷たすぎることなく澄んでいる。悪く言えばやや個性に欠けるかもしれないが、しかしそれは果たして欠点なのだろうか? ちょっとRMEのプリアンプを思い出させる音だが、それよりやや暖かい。それに加えSN比も素晴らしい。 そしてもし、もう少し冷たく、または暖かくしたい場合には、HMX機能の出番だ。

HMX:真空管?それとも?

HMXは信号に倍音を加えて豊かにし、真空管回路でゲインをブーストしたときに近いサウンドを演出する回路。これはたいへん効果的だ! HMXを入れたとたん、たとえつまみがゼロになっているときでさえ、サウンドは彫刻され美しく彩られる。つまみを回していくと、もし入力信号が強ければディストーションになる。しかしあまりたくさんのカラーバリエーションが得られるわけではない。なぜならHMXのつまみを回しすぎると、すぐにサウンドは輝きと明瞭さを失い、ぐしゃっとした音になってしまうのだ。特殊効果にはいいかもしれないが、何にでもかければいいというものでないことは確かだろう。やり過ぎは禁物。 しかしHMXは要所に透明感が失われないよう必要最低限を使用すれば、豊かで存在感のある素晴らしい効果を発揮してくれる。ちなみにHMXはチャンネル1のみに影響する。

オーディオ・サンプル

全てのサンプルは44.1kHzでS/PDIFデジタル出力からRME Multifaceを介して録音された。MP3への変換は手を加えず、ノーマライズもしていない。 Example 1は弦楽器ブズーキの音をAKG C414とShoeps CMC5にMK-4カプセルでステレオ録音し、位相を段階的に180度まで変化させている。 example1_bouzouki_variphase_mp3はエフェクトをお聴きいただけるよう2つのモノラルトラックのコンビネーション。 example1_bouzouki_right_AKGC414example1_bouzouki_left_ShoepsCMC5_mk4はどちらもステレオに再構築していただくように別々のWAVモノラルトラック。 Example 2ではまずDI端子に繋ぎ、次にC414で録音したWAVファイル。 exemple2_bouzouki_DI_&_mic_DI exemple2_bouzouki_DI_&_mic_c414 example2_bouzouki_DI_&_mic_stereo_mp3はステレオにした結果だ。 MacAlpine's Fusiliers:ボーカルはC414で録音。2コーラス目の最初の部分「stripped」の歌詞の部分でHMXをローレベルで入れており、徐々に上げている。 SM58_HMXはHMXの効果をお聴きいただくためにSM58で録音したもの。始めは適切なレベルで、その後増やしている。 ブズーキ演奏と歌:Georghe Frederico Loriolescu

バリフェーズ

もうひとつの特別な機能はチャンネル2のバリフェーズだ。チャンネルの位相を0〜180度で様々に変えることができる。
MiCO
この位相の調整はフィルタリング・システムによって周波数のタイムラグを起こすことで実現されている。MiCOの取扱説明書ではマイクの正しい設置が常に最重要としながらも、この位相の調整で結果に磨きをかけることができる。オーディオ・サンプルでお聞きの通り効果は抜群だ。バリフェーズ・ボタンによる位相調整はサウンドの形を整えてくれる。しかしこれをひと部屋しかないホームスタジオで使用するのはトリッキーかもしれない。もしサウンド・ソースがモニタールームと防音で分離していない場合、直接音が大きいと調整は難しい。この場合テスト録音を何回か行い聴くことを適切なセッティングが見つかるまで繰り返さなければならないだろう。 MiCOにはDI入力があるにもかかわらず、アンプやエフェクターへの出力レベル・バッファがなくリアンピングには使用できない。MiCOは主にマイクを使用した録音用にデザインされているのだ。もちろんベースやエレクトリック・ギターをMiCOで録音することはできる。単にDI端子に繋いで、もし必要ならチャンネル2のマイクでアンプを録音すればいい。だがこれにはMiCOとアンプ両方に信号を送るYボックスを追加する必要がある。 しかしながらMiCOはピエゾを使用するエレアコの録音にはとても便利で向いている。チャンネル2をマイクで利用している間に楽器の出力をDIに繋ぐ。結果は素晴らしく、バリフェーズの調整によるサウンド・スカルプトと同様に効果的だ。

結論

MiCOは完璧というわけではないし、いくつか小さな欠点もある。最も重大なのはインサートがないことだ。つまみの軽さは既に述べた。そしてゲインはほとんどなめらかに増加するのに、最後の方で突然極端になる。なのでハイ・ゲインが必要なときは慎重に。同様に残念なのはHMX、バリフェーズ、ローカットの各ボタンを押す度に小さなノイズが発生すること。深刻なものではないが、録音中に調整するのはためらわれる。 これらの細かい点にもかかわらずMiCOは購入を検討する価値がある。既に機材が充実している場合はこれを買えば、1,100ドル前後で2つの高品質なプリアンプが手に入り、しかもライン入力でバリフェーズが使える。最初のプリアンプを探している人にとっては、リーズナブルな価格、素晴らしい音質、ポータブル性、そしてサウンドのパレットを拡張できる機能などの点から、更に的を得た買い物だと思われる。そして高品質のデジタル出力があるだけにサウンドカードのアップグレードが当分必要なくなりそうだ。価格を抑えコンパクトにするために払われた犠牲は、その仕上げや音質、機能の面でもMiCOがプロ用機器であることをスポイルしてはいない。手短かに言って、非常に魅力的なデバイスだ。
  • 音質
  • インテリジェントなコンセプト
  • とても便利な機能
  • エレガンス
  • 可搬性
  • 充実した端子群
  • 内蔵コンバーター
  • インサート端子なし
  • つまみがやや軽い