ZOOM Stack Package 詳細レビュー
コンセプトそのものはオリジナルというわけではないものの、ZOOMはギタリストやベーシスト向けに直感的なソフトウェア/ハードウェア・セットアップが可能で、しかも真空管を内蔵している興味深いインターフェースを出している。近年では、ギタリストやベーシストはかなりの数のインターフェースを選べるようになってきており、特にLINE 6によるところが大きいが、ZOOMはモデリング・ソフトウェアと高インピーダンス入力を備えたUSBオーディオ・インターフェース、そして真空管を組み合わせてきた。詳しく見て行こう。
kon-tiki 2009/1/3
ZOOM ZFX STACK PACKAGEをテスト

設置
ZFXパッケージにはS2tインターフェースとZFXプラグインが含まれる。Windows XPへのインストールは頑張る必要がないくらい簡単。見たところMac OS XやLinuxシステムへのインストールもドライバー不要で容易なようだ。しかし注意しなければならないのは、付属のZFXソフトウェアはWindowsでしか動かない点。そのためにZOOMはGuitar Rig 3 LEもパッケージに含めているのであり、それはZOOMがZFXソフトウェアの出来に不満足だからというわけではないのだ。ZOOMはDAWが必要なユーザーのためにSteinberg社のCubase LE4も付けてくれている。 あまりパワフルでないPCでもこのインターフェースとソフトウェアが動作するか確かめたかったので、古いラップトップ (Windows XP SP2、512MB RAM) にインストールしてみた。グラフィック的ないくつかの問題 (疑いなく筆者のグラフィック・カードはやや古過ぎだが) を除けば、テスト環境で使用しているDAW (Sonar) のオーディオ設定を正しく調整した後はインターフェースとソフトウェアは完璧に動作した。このUSBインターフェースで驚いたのは、1msという非常に低いレーテンシーを得ることができた点だ。 スタートアップとマニュアルの2つのPDFが付属し、また印刷されたかなり軽便なスタートアップガイドが2つ含まれる。これらのガイドの問題は、ほとんどがインストールとZFXソフトウェアにフォーカスされている点 (150ページも!)。高度な使い方のセッティングに関する記述がないのだ。筆者はダイレクト・モニタリングのレーテンシーが長過ぎる (約15-20ms) という問題に直面した。全ての基本的なセッティングと上級セッティングを試し、最終的に高度な設定のセクションでバッファを変更することで解決できたが。もっと早く気づけ自分、という気もするが、ガイドにはバッファとその役割に関する記述が見つけられなかったのだ。機能とスペック
S2tは作業机の上に設置するようデザインされており、自重と4つの脚によって安定している。ギター、ベース、ボーカルマイクやキーボードを繋いで24ビット/48kHzで録音可能だ。USBポートから電源を供給するため外部電源アダプターが必要ない点もありがたい。フロント・パネル
フロント・パネルにはHi-Z、フットスイッチ、コントロール・イン入力、そしてヘッドフォン出力の各端子があり、全て¼インチTRS。6つのつまみは左から順に、チューブ・レベル、ソリッドステート・チャンネル1、ソリッドステート・チャンネル2、ダイレクト・モニター、フォーン、アウトプットの各ゲインを調整する。更に3つの切り替えスイッチがあり、Hi-Z/マイク/ライン、モノ/ステレオ、そして48Vファンタム電源のオン/オフを切り替えるようになっている。 このインターフェースのユニークな特徴であるHi-Z入力セクションには12AX7真空管が組み込まれており、ソリッドステート(トランジスタ)サウンドと真空管のコンプレッションおよび歪みをブレンドする機能を備えている。アナログHi-Z端子からの入力を、トランジスタ回路と真空管回路によって増幅された信号をミックスすることができるのだ。バック・パネル
背面パネルにはステレオ出力 (RIGHT、LEFT/MONO ¼インチ標準フォーン端子)、ステレオAUX入力 (ミニフォーン端子)、2つのライン入力 (CH2/RIGHT、CH1/LEFT ¼インチ標準フォーン端子)、そして2つのXLRと標準フォーンのコンボ入力端子が並ぶ。1.1、2.0互換のUSB端子も背面にある。ファンタム電源が必要なコンデンサーマイクは、オンボードの48Vファンタム電源を備えたバランスXLR入力に接続できる。 ZFX Stack Packageでは (ZFX Control Packageと異なり) フット・コントローラーは同梱されない。その代わりZOOM FS-01、FP-01/02といったコントローラーを接続する専用端子が設けられている。筆者はこれらのコントローラー・デバイスを所有していないがZOOMによれば、トーンとボリュームのリアルタイム・コントロールに使用できるとのことだ。その他にもアンプ・チャンネルの切り替えやディレイタイムの設定、パッチの切り替え等の機能をアサインできる。ZFXプラグイン
ZFX stack packageのメイン機能のひとつが、Guitar RigやAmplitubeのように、アンプ、ペダル、マイク等をシミュレートするZOOMのZFXプラグイン (スタンドアローン・アプリケーションも含む)。ZOOMがGuitar Rig 3 LEをこのパッケージに同梱している点に惑わされてはいけない。それはZOOMが彼等のソフトウェアをより低く評価しているからではなく、ZFXプラグインがWindowsでしか動かないからに過ぎず、そのためにGuitar Rig LEをおまけに付けているのだ。以下に主な機能のいくつかを挙げよう。- 有名なアンプをモデリングした12種類のギターアンプ
- 5種類のベースアンプ
- 16種類のスピーカーキャビネット
- 4種類のレコーディング・マイク
- 41種類のペダル
- Marshall JCM800-like (slightly crunchy)
- Mesa Boogie Dual Rectifier-like (distortion)
- Roland JC-120-like
- Peavey 5150-like
- Diezel Herbert-like
実際の使用
真空管内蔵というのは面白いアイディアだし、確かにサウンドに変化をもたらす。しかし本当に大きな違いがあるのかって? まぁ個人的には、極端に違うとは思わない。このデバイスの真空管を別のものに交換することは可能だし、そうすれば大きな違いが聴きとれるかもしれないが。現状のところでは、この機能によって得られるトーンの違いは筆者の耳にはそなに多様というほどではないが、ご自身で判断していただく方が良いだろう。真空管とソリッド・ステートのサンプル・ファイル (アメリカン・フェンダー・ストラトキャスターのミドルとブリッジ側ピックアップを使用) を聴き比べていただきたい。 インターフェースはとても良く出来ており、何をすべきかがひと目で判るが、同時に使える入力タイプは1種類だけだということは知っておくべきだろう。従ってHi-Z入力でギターを録りながら、XLRコンボからボーカルを同時に録音することはできない。他の入力端子も同様だ。その代わり、XLRコンボの左右のチャンネルに別々のソース (例えばギターとボーカル等) を同時に繋ぐという方法が考えられるが、そうするとギターのためのHi-Zの特色を活かすことができなくなる。もしひとつの楽器しか同時に録音しないのならこのことは問題にはならないが、それでも覚えておくべき点だ。 ダイレクト・モニタリングも一旦適切な設定にしさえすれば効果的に機能する。先に述べたように、筆者の場合必要な設定を見つけ出すまでは (PDFにもクイック・スタート・ガイドにも記述がない) 多少のレイテンシーが見られた。調整後はレイテンシーは感じることができないほどに低くなった。一般的なレイテンシーに関しては、何の問題もなく最低限のセッティングで行けた (1ms)。 ファンタム電源も何の問題もなく、筆者のコンデンサーマイクでも完璧に動作した。
結論
このデバイスの美点はその多目的性とモジュール的な方向性にある。もし望むなら、他の真空管で実験することもできるし、ZFXソフトウェアもコンビネーションとセッティングが柔軟性に富んでいる。そしてZFXプラグイン/スタンドアローン・ソフトウェアは、Guitar RigやAmplitudeといったライバル達よりも音質的に優れていると見なすことはできないものの、それらに比べてはっきり劣っているわけでもないし、ユニークな機能も持っている。もちろん最善なのはあなた自身が試してみることだろう。特にGuitar Rigと比べてみたいならば尚更だ。むしろZFXの方が気に入るのではないだろうか。しかしもしもZFXソフトウェアが自分の好みでないと気づいた場合でも、S2tインターフェースにはまだ様々な要素を提供してくれる。メーカー希望小売価格18,900円で実売価格が約1万5千円前後 (Line 6 UX2より安い) という価格帯で、頑丈で比較的安定しており音質もなかなか良く低レイテンシーなギター/ベース向けのインターフェースを手に入れることができるのだ。Hi-Zについては、革命的ではないにしてもポイントは高い。興味深い真空管搭載に関しては、誰をもを納得させるわけではないかもしれないが、USB電源という点と相まってホームスタジオ・マニアにアピールできる製品にしている。- 堅牢さ:インターフェース、つまみ、端子
- サウンド
- ナイスな外観
- Hi-Zコンセプト:真空管内蔵
- インターフェースおよびZFXソフトウェア両者とも柔軟性があるモジュール的な方向性
- USB電源
- ZFX GUIがリソースを消費する
- S2tに関してあまり頼りにならないマニュアル
- ZFXプラグインはWindowsでしか動かない
所有機材








